悪魔がウチにおりまして・458
ウチには悪魔がいる。
ときどき奇行に走る悪魔が。
「ぐっばいはぁーーーーいつまで経ってもーー」
出し抜けに叫びだす悪魔。
「口に出せそうにーーーーありませんーー」
食べていた大判焼きをぽとりと落とす狐。
「9時59分ーーーさとみ8ごぉーーー、発信シークエンス、オールグリーン!発信許可!」
なんでやねん。
「ミミちゃん、今川焼が落ちまちた」
あ、やばい。
「ごんちゃん、それは不注意で落としたとふぎゅう」
狐、悪魔の口に向けて肉球ハング。
「誰かが、いきなり、大声を出ちたせいで、落ちまちた」
狐、それで口塞いでいると謝るのも言い訳もできないよ。
「狐ちゃん、大判焼きなら買ってあげるから」
「甘いです、ニンゲン殿。動物のちつけはすぐに、忘れぬうちに、です」
おぉ、遠慮ねぇ。
なんなら悪魔を「動物」と言い切った。
「こんにちは。おや、ごん君。回転焼きを食べられなかったような顔をしていかがなさいました?」
羊、本当は見てたんじゃないの?
「羊殿。今ミミちゃんへの教育中です、おだまりなさい」
キャラ崩壊するくらい怒ってるのか。
「……今来るべきじゃなかったですかねぇ」
牛が頭を掻きながら入ってくる。
手には紙袋。
「せっかくお焼きを買ってきたのですが」
あんた、救世主だよ。この瞬間だけ。
「牛、牛、今悪魔が口極められてるから分けましょ」
「ほふもはへたいへふ!」
まさか、この状態で食い意地を優先する!?
「ほう、まだ折檻が足りませんでしたか。クモ殿!焼けた火箸を!」
さすがにそこまで行くな!
対して老悪魔ズは慌てず気にせずお茶の用意。
「それくらいではマッサージみたいなものですからねぃ」
「ですね。ミミ君、日ごろのコリをほぐしてもらってください」
その様子を最初から見ていた神ちゃんが瞬きをして大判焼きをじっと見てる。
「神ちゃん、どうしたの?」
「みんな、コレの呼び方違うのに会話してる……なんで……」
『えっ?』
みんなでハモるとは思わなかった。
ウチではおやつの時間。
「神ちゃん、美味しければ良いのです」
「ミミちゃん、熱くないの?」
悪魔は、七輪で焼かれていた。




