悪魔がウチにおりまして・456
ウチには悪魔がいる。
嬉しそうにタブレットを持ってきた悪魔が。
「あれ?あんた今日仕事じゃないの?」
「ふっふっふー!なんと!ボクの会社にも!テレワークが導入されたのです!」
……大丈夫か、コヤツ。
こんなサボりの常習犯が目の行き届かない場所で仕事なんてするわけが……。
「ニンゲンの思惑はわかります。ボクがサボると思っているんでしょう!」
ビシッとヒヅメをこちらに向けてくる。
よく自分の見られ方わかってるじゃない。
「しかぁし!ボクの信頼は意外とあるのです!」
意外って言ったことは流してあげよう。
ひらりと紙を見せてくる悪魔。
「専務からの指令書です!」
「えー、なになに?『決められた成果を上げられなかった場合、覚悟するように。ソロモン』……。ガチじゃん」
寒気すら覚えるこの指令、悪魔こなせるの?
「大丈夫ですよー、いつも通り仕事しろってことなので!」
そんな楽観的に考えて良いの?
「さぁ、お仕事開始ですー!」
悪魔はさっそくタブレットを横にして、キーボードを叩き始める。
たん、たたたん。
タッチタイピングをしているあたり、本当に仕事をしているように見えるが……。
「あ、メガネ忘れました」
ぽきゅぽきゅぽきゅ……、悪魔は部屋に向かう。
「では、続きを!……ココア飲みながらでもバチは当たりません」
ぽきゅぽきゅぽきゅ……。悪魔はキッチンに向かう。
「再開です!マシュマロを入れないと」
「会社行けや」
歩くたびに音の鳴る生き物が仕事してたら気が散って仕方ない。
「なぜですか!まさかニンゲンは会社に顔を出して飲みニケーションしなければ仕事でないという、平成スタイルなのですか!」
まだ令和6年で前元号を揶揄するんじゃない。
「動くならまとめて動く!あっちこっち歩かないの!」
「はーい……歩かなければいいんですね?」
そういうと悪魔は悪魔体操の「手を腰の脇に置いて、空を飛ぶ運動」で移動を始める。
その動きに音が出てれば文句も付けられただろう。
恐ろしいことに無音なんだよね。
「……物理無視しないでくれないかなぁ」
「ふふん!悪魔族にとっては序の口なのですー!」
ウチでは悪魔が飛んでいる。
クモもマネしているがもちろん飛べませんです、はい。




