悪魔がウチにおりまして・453
ウチには悪魔がいる。
キッチンで張り切っている悪魔が。
「ニンゲン!今日のご飯はボクが作るのです!」
昼頃、出し抜けにそんなことを言い出して米を研ぎ始める悪魔。
「何作ってくれるのー?」
「今日はななくさがゆの日なのでしょう?せっかくなので作ってみるのですー」
そういえばそんな日だったわね。
ところで、アイツは春の七草知ってるのだろうか。
「えっと、タンポポ、ドクダミ、ビンボウ草」
「ちょいちょいちょい」
思わずキッチンに駆けていく。
「なんなのよ、その雑草オンパレードは!」
そんなものを鍋に入れられたらその鍋捨てなきゃならないじゃない。
「ななくさがゆです!葉っぱを7種類入れると聞きました!」
決まったものを入れるんだよ!
「せっかく贅沢にクローバーも入れるというのに!ほら、四葉!」
幸せをかみ砕くんじゃない!
「お困りのようですね」
悪魔の雑草粥作りを止めているとき、クローゼットからモグラが出てくる。
「ぽんちゃーん!お年玉くださーい!」
「ニンゲンさん、ミミちゃんにキツイお年玉上げてください」
「あいよ」
無論、拳という名のお年玉をプレゼントするのだった。
「みきゅう……」
その場で昏倒する悪魔。
どうせフリなので放置です。
「モグラ、このタイミングで出てくるってことは持ってるの?」
「タヌキです。もちろんです。我がもぐもぐカンパニーに揃えられない作物はありません」
『じゃじゃーん』と自分の口で言いながら袋詰めされた野菜パックを取り出すモグラ。
「ちゃんと旬の時期に集め、塩漬けにしておきました。使う際には水に浸けて塩抜きをしてください」
想像以上にちゃんとしていて、文字通り草なんだけど。
「あんた、よく調べたわねぇ」
「こちらに出荷するなら需要は調べねば。……さすがにビンボウ草を煮るわけには」
ときどきモグラが一番まともに見えてくるから不思議だ。
起き上がった悪魔がしげしげと中身を確認している。
「……ぽんちゃん、これって去年ボクと集めた雑草じゃないです?」
お前も手伝っていたんかい。
「……そ、そんなこと無いですよ?で、ではこちらは差し上げますので」
……これ、悪魔が言わなければ売りつけられてたな。
ウチでは七草粥が食卓に上っている。
「……しょっぱい、水抜きは?」
「みずぬきってなんです?」
せっかくの、節句ものなのに……。




