悪魔がウチにおりまして・452
ウチには悪魔がいる。
不貞腐れている悪魔が。
「ニンゲン、定期的に起こることなのですが」
さっきまで露骨に不機嫌オーラを出していた悪魔が意を決したように私の前に立ちはだかる。
「なに?」
「ボクの扱いが雑だと思うのです。この前、ちょっとしたジョークにも関わらず吊るすなど、基本的悪魔権の侵害です」
出た、悪魔権。
「それに関しては私も参戦しましょう」
いきなりクローゼットから出てきた羊。
「最近出番が雑です。残り物処理のように扱われている気がするのです!」
それはアンタが新婚で絶妙なタイミングでしか来ないせいでしょう。
「私も参戦して良いです?」
「辰田さーん!」
「ミミさん、それは煽りなんで。ちなみに私はニンゲンさんの味方をしましょう」
牛の言葉にアゴを落としてしまう2匹。
「辰田さん!裏切るのですか!」
「それは煽りと受け取ります。やー、ニンゲンさんの味方しておいた方が面白そうなので」
それが理由なのはムカつくけど、この口八丁が味方なら文句は無いでしょう。
「牛さん!そんなこと言うと担当を……」
「ミミさん、それをやるなら隠しているココアは回収です」
牛、青筋立てて悪魔を制止。
待て、まだココア隠してるのか!?
「で、基本的悪魔権ってなに?」
人権っぽいことなんだろうけど。
「基本的悪魔権……それは『悪魔に自由を』を掲げて勝ち取った権利……具体的にはチェス5本勝負で神族から勝ち取った権利なんです」
……割と平和だった。
「ちなみに私も参戦して私以外皆勝ちました」
羊、こんなところでも戦犯である。
「要するに、自由がないって言いたいわけ?」
『そうです!』
ハモるなし。
「そこ、アレなんですけど。ここ相当自由じゃないです?だって普通私たちこっちにきて変化しなくていいんですよ?」
牛がぽつりとつぶやくと、2匹の悪魔族は手を打つ。
「え?こいつら変化するのって人前出る時ちゃんと……」
「……あの、ニンゲンさん?あなたはニンゲンじゃなければ何者です?」
牛の呆れ声がすべての結論でした。
ウチには悪魔がいる。
「あの、ココア没収だけは勘弁してください……」
「私にも飲ませてくださいね、30枚チケットで妥協しましょう」
そうか、牛も悪魔だったか。




