悪魔がウチにおりまして・448
ウチには悪魔がいる。
さっきからチョコを食べ続けている悪魔が。
「そばの次はチョコか……」
しかし今回のチョコは自ら食べているようである。
「甘いのです……。昨日とは違う……。しょっぱかった……お口の中がしょうゆしか感じなかった……」
昨日の中和をしていたのか。
部屋に積まれた大量のチョコは砂場のトンネルの如く掘り進められていく。
頭をチョコの山に埋めながら掘り進んでいく様子は冬の風物詩と言えるだろう。
「ニンゲンさん、それ風物詩にするなら俳句をどうぞ」
「……チョコの山、アタマ埋める、悪魔かな?」
羊がなぜか頭を叩いてくる。
「なんでよ!?」
「思いのほかちゃんとやられて悔しくなりまして」
とりあえずバリカンを手に取ると、羊と反復横跳びをする羽目になる。
「明けましておめでとうございます。おふたり、なんでカバディしてるんです?」
牛が大きい箱を持ってあいさつにきた。
「してないわよ!?」
そんな競技、教科書でしか知りません。
「おや、辰田さん。その荷物は?」
ちゃんと対応してる羊の律義さに感心してしまう。
「牛“が”いいです」
律儀を裏切る牛。いつもの光景だ。
「ちなみにコレは龍の肉です、仕留めるの苦労したんですよ」
「ウソでしょ!?」
「ウソです」
このやり取り必要だった!?
「なんか大量のローストビーフを貰いまして。癪なので皆さんとたべようかと」
(何でですかぁ、牛さまぁ!)
聞こえてない、ストーカーの幻聴なんて知らないんだ。
「牛さんー。ボクは甘い物しか受け入れられないですー」
チョコの山からくぐもった声が聞こえてくる。
「そうですか。誰が作ったかは知りたくもありませんが、丹念に焼かれた牛肉、そしてソースを味見するとどうやらテールエキスを混ぜたデミソースみたいですよ」
本当に料理のセンスは素晴らしい。
贈る相手が牛じゃなければ。
「……はっ!牛さん、ボクも、ボクもぎゅうにくを……」
「いやぁ、甘くないんですよー、しょっぱいんですよー、ミミさんはその山盛りのチョコをどうぞー?」
腹立つわぁ、このビーフカルパッチョ。
「ほら、みんなで食べましょう。ミミさん以外と」
みんなには配るんか。
ウチでは牛肉パーティーになっている。
「美味しいのです、担当!!」
煽るだけ煽って、ちゃんと分けるのが牛だよね。




