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悪魔がウチにおりまして・445

ウチには悪魔がいる。

臼を引っ張り出してきた悪魔が。


「悪魔、何やってんの?」

米を蒸して、石臼でそばを挽いている悪魔に話しかけると目を回しながら唾を飛ばしてくる。

「ニンゲン、見てわからないですか!忙しいので簡潔に!」

えっと、どこかにバットはあったかしら?

残念なことに見当たらなかったので惨劇は回避された。

「ニンゲンさん、目が笑ってません。落ち着きましょう」

背中に神ちゃんを背負った羊からどぅどぅとなだめられていることにまたボルテージが上がりそうなんだけど。

「人の仔、相変わらず行動力に溢れてるわね」

神ちゃんから皮肉を言われるってこんなにキツイと思いませんでしたわ!?

「なんで悪魔があんなに慌ててるの?」

おモチとそば、別にすぐ必要な物じゃないでしょうに。

「おや、ニンゲンさんならご存じかと思ってました。大晦日に新年の準備をしてしまうとその次の年忙しくなってしまうという迷信がですね」

ご丁寧に説明してくれている羊の後ろで泡食ってそばを突いている悪魔がいるんですが?

「ミミちゃん、逆!おそばは混ぜ混ぜだよー」

「神ちゃんも手伝ってください!クモちゃんが帰ってこなくて手が足りてないのですー!」

除夜の鐘を届けに行ったクモはまだ帰ってきてません。

連絡取れないから何をしているのやら。

そんな脇で将棋を指している狐と牛。こっちに頼まないの?

「ニンゲン殿。これは真剣ちんけん勝負……。手出ちは無用です」

「ニンゲンさん、事と次第では呪いますよ」

将棋に水差したくらいで呪われんの!?

「……悪魔よ、なぜ私はモチを返しているのだ?」

……天使さん、久々に来たのに雑用だなんて。

「天使さん!手を潰されないように気を付けるですよー!いよー!」

宴会芸よろしく、高速餅つきを始める悪魔と天使。

これ、録画してたら衝撃映像でバズらないかしら。

「餅つきはヒトの手を持っていないと厳しいですから。ほら、ヒヅメ」

羊は自らの手を差し出す。

確かにコレだと餅がめっちゃくっつきそう。

「ねぇ、これは細切り?太切り?」

手慣れた手つきでそばを切る歯医者など見とうなかった。

「一応聞くけど歯医者さん、偉いんでしょ?プライドは?」

「ほら、こっちで開業している時点で仕事好きだし」

悪魔族って意外と真面目なの多いよなぁ。

「王手」

「待った」

牛、負けてるし。


ウチには不思議生物がたくさんいる。

師走というけど、ウチに限っては魔走なのかなぁ?

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