悪魔がウチにおりまして・442
ウチには悪魔がいる。
リアカーに鉄を積んでいる悪魔が。
「鉄はー鉄は要りませんかー」
「何やってんの?」
呆れて物も言えないけれど、聞かないと話が進まないので礼儀として聞いてあげる。
「コレを売り切らないと年を越せないのです。ニンゲン!鉄は要りませんか!」
要るわけがないでしょう。
「あと何トンあるのよ」
スタート5トンで昨日から売り始めたからまだまだたくさん……。
「あと300キロですー」
すげえな、コイツ。
「徹夜で売ってたら意外と売れました。ところでニンゲン!徹夜って声で聴くと鉄屋っぽくないですか!?」
どうでもいいわ、そんなこと!
「てか、一日でどうやって売ったのよ」
悪魔は鼻を鳴らして勿体ぶる。
「鉄を全部細くして糸にしたんです。鉄って細いと燃えるから夜寒そうにしている人たちに売り歩きました。富士山の近くではよく売れました」
どこまで歩いていったのさ!?
「ちなみにいくらで売ったのよ」
「え?一個10円です」
やっす!?
「鉄買ったときに75,000円だったので、それを越えられれば」
鉄って安いんだなぁ……。
「というわけで300キロ要りま」
「せん」
そんなプレゼンされても買わないものは買いません。
「なぜですか、5,000円もないのですか!?」
「必要ないって言ってるの」
仮に暖を取りたいならエアコン使います。
「こうなったら最後の手段……」
「……何をする気?」
悪魔はスマホを取り出すととあるところに電話する。
「……ボクです。最終手段になりました。ええ、例のブツを持ってきてください」
低い声で、怪しいことを言い出す悪魔。
「悪魔、悪魔に身を落とす気!?」
「ニンゲン、その言葉は頭悪くないです?」
悪魔にヘッドロックをかけているところに現れた、それは……。
「ミミちゃん、例のモノ持ってきたです」
モグラが持ってきたのは大量のイモ。
「……なんで?」
「ミミちゃんが言っていました。世にも珍しい『鉄焼きイモ』を売るって」
……えっと?本気ですか?
ウチの路上でイモを売る悪魔。
サイレンが聞こえてきてめっちゃ怒られたのは言うまでもない。




