悪魔がウチにおりまして・440
玄関先にモグラがいる。
一生懸命チャイムを鳴らそうとしているモグラが。
「何やってんの、アンタ」
いままでコイツが玄関から入って来たことなどなかっただろうに。
「ニンゲンさんで良いか。ハンコお願いします」
モグラは伝票を差し出すとハンコを求めて来た。
「宅配便なんかやっていたっけ?」
「最近増やしました。もぐもぐクンパニーです」
クンパニーとはこれいかに。
「くんぱ……?」
「3つ目なので。生産のカンパニー、加工のキンパニー、運送のクンパニーです」
なんで会社名そんな風に遊んでいいのか?
「ゆくゆくはもぐもぐティンパニーを作るのが目標です」
それは太鼓セットになるんだけどそれは?
「でもなんでわざわざアンタが運んでるの?社長でしょ」
モグラはゆっくり首を振った。
「ボクしかこっちに来れないのです。ミミズしかり、ミノしかり。なのでこっちに運ぶのはボクの仕事になってしまいます」
割とこっちに来れるのって特殊なんだね。
ちょっと待って?
「この前来てたイモ虫は?アイツ、ひょいひょい来てたでしょ」
「アレは……旅立ちました……冬ですので」
神妙な顔を浮かべるモグラ。
それは、悪いことを聞いちゃったかもしれない。
「まぁ、虫だから寿命も……」
「今頃は草津で温泉まんじゅう食べてるでしょう」
なんで温泉楽しんでるんだよ!
ちょうどその時にぴろんっと電子音が鳴る。
「写真が来ました。こんな感じみたいです」
そこには温泉着を着て、とっくりを傾けるイモ虫が写っていた。
なんでスマホ使えるんだ?そして誰が撮ったんだ?
「なんか、コヤツが一番こっちの世界楽しんでるよね?」
「どこから湧いてきたのかもわからないから不思議です」
アンタも分かってないのか。
「ちなみに誰になんの届け物?」
「ミミちゃんが鉄を5トンほど」
……は?
「何に使うの?」
「ボクは頼まれただけなので。どこに置きます?」
モグラがこの家の中に運び込もうとしているのを慌てて止める。
「モグ、それ運び込んで床抜けてみなさい?狐ブチキレるわよ?」
「タヌ……ごんちゃん、確かに」
普段なら頑なに自分をタヌキというモグラを黙らせる狐のキレ方。
「でも、ボク関係なくないですか?ごんちゃんが怒るのは……」
「誰が怒るので?」
間が悪い狐の帰宅。
「ごんちゃん、鉄5トンここに入れても良いですか?」
ウチでは小動物がキレている。
「ぽんちゃんには常識というものがあるのでしょうか?」
「ちゃんと外に置きますので……」
モグラも試すんじゃないって。




