悪魔がウチにおりまして・438
ウチには悪魔がいる。
ウチのトラブルの原因である悪魔が。
「はぁ……」
思わず漏れたため息に悪魔は糸玉を作る手を止めた。
「ニンゲン、どうしました?失恋ですか?」
なんで悪魔の顔に金づちがめり込んでいるのかしら。
糸を出していたクモが慌てて悪魔の頬をぺしぺし叩いている。
「ニンゲン殿、金づちはいけません、金づちは」
狐が青い顔になりながら使った物を咎める。
「今度からもっと軽い物にするね」
「そうじゃないですー!そもそも物を投げるんじゃないですー!」
「アンタが失礼なことを言うからでしょー?」
失恋どころか恋の雰囲気すらないっての。
「そうは言っても、普段ならここまですぐに手を出さないでしょう。いかがなさいまちた?」
狐はほうじ茶を差し出しながら尋ねてくる。
そのほうじ茶にひと口つけると再びため息を吐く。
「考えたらコイツが来てからっていうもの、平穏な日々がなくなったなぁって」
その言葉を聞いて目を丸くする悪魔と狐……クモまで!?
「なによ、その反応」
「それ、今さら言いますか?」
「某たちが来てから1年以上経ってます」
それがどうしたのよ。
「ボクたちが来てすぐに言われるならまだしも、もう1年ですよ?」
「いい加減慣れましょう」
まさかクモまで頷き始めた。
「ごんちゃん、慣れましょうってまるでボクがトラブル運んでるみたいじゃないですか」
「おやミミ殿、ご自覚がないとは恐ろちい」
狐って時々火の玉ストレート放り投げるよね。
「そんな!ボクが原因のトラブルなんで200個くらいしかないじゃないですか!」
充分多いわい。
「というかその量のトラブルに慣れろ、と?」
「ミミ殿と暮らすということはそういうことです。捌けてるニンゲン殿もあっぱれです」
誉められた気がしませんし、なんで悪魔が照れてるんだよ。
「いやーそれほどでも」
「今からでも悪魔族追い出さない?」
狐に冗談の提案をすると頷く。
「……次、阿呆なことをちたらそうちます」
「ごんちゃん!?アホなことなんてしてないのです!」
狐はカッと目を見開いた。
「ミミちゃん?もうお忘れですか?このびるを燻製するような案を?」
ウチには悪魔がいる。
壁にめり込むのを見慣れてしまった悪魔が。




