悪魔がウチにおりまして・435
ウチには悪魔がいる。
また狐に詰められてる悪魔が。
家に帰ると狐に壁ドンされている悪魔。
狐特有のブチ切れ状態が背中からでもわかる。
「また変なこと言ったんでしょ?」
「ニンゲン殿、お帰りなさい」
くるりと狐が振り向くと悪魔が悲鳴を上げる。
「ごんちゃん!?踏んでます!なんか重いですよ!?」
ヒヅメ貫通する重さってどういうことよ。
「狐ちゃん、今日は何アホ言われたの?」
「アホ言うなです!ごんちゃん!言ってやってください!」
踏んでる相手に擁護を頼むとは愚かな。
「ニンゲン殿、ミミちゃんはアホではなく、バカです。ちかも取り返ちのつかないバカです」
「けちょんけちょんです!?」
足に乗っている狐のせいで悪魔の表情は見えないが、おそらく涙を流しているのだろう。
「今回の原因は?」
狐は重くため息を吐いた。
「ぴざ窯が欲ちいとのたまいやがりまちた」
「……どこに?」
ピザ窯ってあのピザ窯よね?
デカいし、重いよね?
「ほらー、ここには大きな庭があるじゃないですかー」
狐越しに朗らかな声を上げる悪魔。
「いいですか、ミミちゃん。お外に煙の出るものを置いたら苦情が来ます」
足を踏んだまま振り返り、鼻先を悪魔のほっぺに突きつける。
「野焼きと言い張れば……」
「野焼きも許可を取らないと。というか、びるの中で?野焼き?そうですかぁ、某のびるを燻製にちたいのですね?」
おぉ、更に距離が近付いている。
「ビルは燻製にしても食べられないのです……」
「そうですね、びるは食べられないですね。ぴざも食べられないのですよ?」
狐が怒りのあまり無茶を言っている!?
「焼けば食べられるのです……」
「その焼くためのものが用意できぬと申ちております。なんならミミちゃんが焼きますか?素手で持ってたら直火ちてあげますよ?」
狐、そこまでにしときなさい。
「え?持ってれば焼いてくれるのです?なら窯いらないですねー」
狐のせいで顔が見えないが、安心した声が聞こえてくる。
「なんだぁ、それでいいなら窯なんて邪魔ですー。ごんちゃん、優しいのです?」
「み、ミミちゃん?手で持ってぴざ焼くのですか?」
おい、言ったやつが動揺しない。
「だって、火山地帯よりは温度低いですよ?簡単ですー」
……なんか、常識って大切だなぁ。
ウチには悪魔がいる。
「大変です、ピザを乗せられるお皿がありません」
お好きになさってくださいな。




