悪魔がウチにおりまして・433
ウチには羊が来た。
トラブルしか運んでこない羊が。
「ニンゲンさん!匿ってください!」
「断る!」
羊が開けた扉を即閉める。
悪魔はこちらに信じられないモノを見る目を向けてくる。
「ニンゲン?理由聞きましょう?」
「やーよ、絶対面倒ごとだから」
『ひつじぃぃ!原稿上がったかぁぁ?』
扉の外から担当さんの叫び声が聞こえている気がしますが、おそらく幻聴なので大丈夫です。
「ニンゲンは悪魔です」
悪魔は玄関の外に向けて手を合わせている。
助けないアンタも同罪ですよ。
「せっかくだから羊がシバかれているの、見物してココアでもどう?」
「人の仔、いつからそんなに歪んでしまったのかしら?」
なんか声が増えてる。誰が話しているかはわかっているので身構えませんが。
「神ちゃん、ご挨拶だね。今度の料理教室の課題はできたの?」
「ミミちゃーん、人の仔がぁ」
「神ちゃん、しっかりやりましょ?」
唐突の裏切りに目を丸くする。
「ミミちゃんまで……」
神ちゃんはハンケチを目に当てながら「よよよ」と言っている。
「で?わざわざどうしたの?」
そろそろ本題に入らないとこのままダラダラと居座るでしょ?
「やっぎーがこそこそ出かけたからー。会うの、女でしょ?」
まぁ、女(担当)だろうけどさ。
「浮気だったらひき肉にしようと思ってー」
大丈夫、その相手が好きなのはマトンじゃなくてビーフだから。
「とりあえずお邪魔しまーす」
神ちゃんは率先して羊の部屋に向かっていった。
「……ついていく?」
「修羅場です?面白そうなのですー」
コイツも大概だわ。
「溝口さん、この案は」「ボツ」「新キャラを出しては」「ボツ」「実は胃潰瘍でして」「却下」
……違う修羅場が展開されていますが???
「どうもー、初めましてー。ウチの羊がお世話になってますぅ」
恐れを知らぬ神よ、この空気に物怖じせぬか。
「ボツ、ボツ、どうも、ボツ」
一瞥もくれやしないぞ、このヒトの皮を纏った地獄は。
「スーさん、危ないので帰って……」
「なぁに?やっぎーはこの堕ちた仔の肩持つわけ?」
ビキキっとこめかみに血管が浮き上がる。
「……騒がしいと思ったら。どうも、私こういう者です。あなたの旦那さん、仕事遅いんでこうなってます、邪魔をしないでください」
ウチの隣は修羅場になっている。
まさかの続く!




