悪魔がウチにおりまして・432
ウチには
「人の仔ー!聞いてよー!」
嫌な予感しかしません。
いきなりクローゼットから飛び出して来た神ちゃんがティッシュで鼻をかみながら足元に寝てた悪魔に躓いてそのままベランダの外に飛んでいった。
「襲撃ですか!?ちんぶれなのですか!?」
種族的には襲撃なんだろうけどさ。
「なんか神ちゃんが飛んでいった」
「ウソです、神ちゃんは飛べません」
そうね、そのまま落ちていったからそうなのでしょう。
「人の仔ー!開けてー!」
落ちたはずの神ちゃんが玄関のチャイムを連打している。
「神ちゃん、なんで外からですー?」
開けるな、危険だ!
「やっぎーがひどいのー!」
めきょっと扉を壊しながら入ってくるのだった。
狐が泣きながら段ボールを扉に貼っている。
今回、完全なとばっちりだもんねぇ。
「神ちゃん、落ち着きました?」
周囲に酒瓶が転がっているのだが、そろそろお帰り頂きたいですな。
「うん、ちょっと飲んだら落ち着いた……」
ねぇ?6本!ビン6本!
「どうしたんです?羊さんがなんかしました?」
悪魔の言葉に神ちゃんは机にエルボーをかます。
「そうなの、聞いてよ!」
曰く、クリスマスの予定を聞いたところ仕事と答えられたとのこと。
「新婚よ!?なんでクリスマス一緒に過ごせないのよ!」
それでこんなに荒れてて被害を受けたのが狐ってシュールだよね。
「あー、それは神ちゃんが悪いですー」
神ちゃん、その手に持った酒瓶を下ろしなさい。
「悪魔族、クリスマスとかバレンタインは基本仕事ですよ。ニンゲンを堕落させるために七面鳥を狩り、クッキーを焼かないと」
「でもやっぎー、こっちの世界で働いてるじゃない!ほら、人の仔だって……うん、私が悪かったかも」
待って!?こっちの労働状況見て諦めたの!?
「人の仔……休めるときは休まないとだめよ?」
同情するなら休みくれ!
「というわけで、クリスマスと正月はお仕事ですー」
「新婚なのに?」
目を潤ませる神ちゃんだが今回ドアぶち破ってるので慰めませんぞ。
「そもそも神族と結婚する悪魔がいるなんて想定外ですからー。こっちは休みが被るので」
「ふぅーん……分かった」
ゆらりと立ち上がると、神ちゃんはクローゼットに戻っていくのだった。
「……いやな予感します」
ウチには羊が来た。
「クリスマス、いきなり休みになったのはなぜでしょう?専務は『戦争を回避するためだ』って」
やりやがった、あのワガママ娘!




