悪魔がウチにおりまして・41
私はカラオケに居る。
地雷子ちゃんとホストと一緒に…なんだこれ。
「カラオケの機種のご希望はございますか?」
「曲の多いほうで」
朗らかな笑みを向けながら話してくれるお姉さんの目は若干笑っていない。
私の返答がつっけんどんだったわけではない。
後ろでアメの自販機に夢中で大騒ぎの2匹のせいだろう。
「あー!プリン、ボクもほしいですー!」
「私のお金で取ったのです、悔しければ自分で引き当てるんですね」
「ほら、いくよー」
騒がしいったらありゃしない。
「えっと、ギガポテト3つ、たこ焼き3つ、あとお箸3つ。取り皿は要りません」
羊は部屋に入るなり電話で注文。
今、ギガって言いました?
「ニンゲン、どうやって遊ぶのですか?」
「これで歌いたい曲入れて…悪魔、何か歌いたい曲あるの?」
「アヴェ・マリア!」
本当にこの子は悪魔なのだろうか。
悪魔が讃美歌を歌っている最中、羊は届けられたポテトを無言で食べ続ける。
カラオケに来たのではないのか。
「羊、歌わないの?」
「何を言っていますか、カラオケはまずポテトを食べてから歌うのが礼儀です」
誰に対しての?
悪魔は続いてアメイジンググレイスを歌っている。
選曲よ。
「なんでこの子、こんな歌しか歌わないの?立場上平気?」
「取引先を誉める歌なのであまりよろしくありませんが、懐メロですからね」
私も高校時代の曲歌うから…納得しかけたが年代を考えて本当に悪魔なんだなぁとメロンソーダを啜るのだった。
「に、ニンゲン!カラオケ楽しい!ヤギさんも一緒に来てくれてありがとうございます!」
怒涛の讃美歌メドレーが終わると悪魔は本当に楽しそうにポテトをひとつまみ。
「それならよかった」
「ごんちゃんたちも来れたらよかったのに…」
「あの子たちは人間になれないの?」
「もともとニンゲンに化けるって意味のないことですから。種族には種族の誇りがあります。ニンゲンも自分の形変えたくないでしょ?」
例えばだが、普段の悪魔の姿になっている自分を想像してみる。
確かに毛だらけのもふもふはちょっとなれる気がしなかった。
私たちは帰路に居る。
羊、歌ってなくない?




