悪魔がウチにおりまして・426
ウチには悪魔がいる。
モグラにガン詰めされている悪魔が。
「悪魔、またやらかしたの?」
こういうパターンだと、大抵悪魔が相手にケンカを売ったことが多いからなぁ。
「ち、違うのです!ぽんちゃんの逆切れなのです!」
「ミミちゃん、ウチに野菜に文句ですか?要らないとはどういうことです?」
ほう?あの食い意地の張っている悪魔が、食べ物を受け取らないと?
「全部要らないとは言ってないのですー!ただ、虫食いがあったと言っただけなのにー」
モグラはさらに鼻先を悪魔の頬にめり込ませる。
「あり得ません。ちゃんとお野菜は検品してます。我がもぐもぐカンパニーは『みんなが安心して食べられるお野菜を』をモットーにしてますので」
悪魔は手に持ったニンジンをモグラに差し出す。
そこにはしっかりと穴の開いたニンジンがあった。
「………………」
いや、モグラよ。何か言い給え。
「ぽんちゃんちからもらったニンジンです。他にもカボチャやジャガイモ、カキは必ず食われてます」
「その野菜、食べました?」
食べないだろ、普通。
「……これには居ない。虫食いの野菜を持ってきてもらっても?」
「それなら一旦離れて欲しいのです」
珍しく悪魔がイラついてるなぁ、仕方ないけど。
悪魔は言われた通り、穴の開いた野菜を持ってくる。
モグラはひとつひとつ野菜を振っている。
あ、出てきた。……出てきた!?
大きなカボチャの中からカブトムシの幼虫のようなイモ虫がコロリと転がり出てくる。
「……言い訳は、聞きましょう。ミミちゃんへあげた野菜だからよかったものの「良くないです!」ほかのところに混ざってたら殺処分でしたよ?」
モグラ、もしかしてイモ虫に話しかけるほど追い込まれて……。
「ニンゲンさん、なんか勘違いしてますけど、この子ウチの従業員です」
はい?
「名前を呼んではいけないイモ虫、なんでこんなことを?理由次第では即解雇、そして閻魔送りです」
イモ虫を両手で掴むと鼻先をめり込ませ、イモ虫にガン詰め。
絵面がシュール過ぎない?
「社長のお友だちにお会いしたくてー」
喋んな、多足類。
「とりあえず、賞与は覚悟しておくように。お騒がせしました、今度新しい野菜を届けます。それじゃ」
そう言うとモグラは野菜を掴み颯爽とクローゼットに消えていくのだった。
ウチには私たちが残された。
「ボク、謝られてないです」
今回ばかりは同情するわ。




