悪魔がウチにおりまして・425
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲン!クモちゃんが家出です!」
なんですと!?
「朝起きたら、こんな紙が……」
悪魔が手に持っていた紙を見せて来た。
「じっかにかえります くも」
歪ながら読めないわけでは無い、しっかりとした文字。
「クモ……文字書けたんだ」
「それ、ボクも思いました。じゃなくて!クモちゃんが、クモちゃんがぁ……!」
滝のように涙をこぼす悪魔。
考えたらいきなりクモを拾ってきたときは勢いで捨ててこいって言っちゃったけど、ウチに居る子たちの中で一番お利口な気がする。
最近かまってあげられなかったけど、家を出るほど思い詰めていたなんて……。
「悪魔、クモが行きそうなところ心当たりはない?」
「何個かあるんですけど……実家はわからないのです……」
そっか、実家に帰るって書いてあるから心当たりを探しても仕方ないのか。
「クモちゃん、最近ふさぎ込んでいる感じはしたんですけど……ちゃんと話しを聞いてあげればよかったです……」
泣くのは治まったものの、まだえずいている。
「ミミ殿、朝から騒がちいですね。ココアが切れまちたか?」
狐がクローゼットからあくび交じりに出てくる。
「ごんちゃん!クモちゃんが、クモちゃんがぁ!!!」
悪魔は再び大声で泣き始めてしまう。
「ふむ……?」
悪魔が振り回していた紙を受け取り、狐は首を傾げる。
「ふむ?ミミ殿心当たりは?」
「無いのですー……嫌われてしまったですか……」
「まぁ、世話してないからね」
「みぃぃぃ!」
ゴメン、つい本音が。
と言いつつ、クモは別に世話を求めてる感じはしないからなぁ。
「ニンゲン殿もお聞きお呼びではない?」
狐はさらに首を傾けていく。
「狐ちゃん、何か知ってるの?」
「クモ殿は年の瀬ですので故郷に挨拶に行くと行ってまちたよ。1週間ほどで帰ってくるとの話でしたが」
悪魔、目が点。
「……実家に帰るってそういうことです?」
「てっきりミミ殿も知っていると思って心当たりは?と」
「そういえばクモちゃん、なにか必死に伝えようとしてた気が……」
バツが悪そうにヒヅメ先を突き合わせている。
「つまり、里帰りってことね?」
ウチには悪魔がいる。
逆さ吊りになっている悪魔が。
「血ーがーのーぼーるー」
騒いだしつけです。




