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悪魔がウチにおりまして・423

ウチには悪魔がいる。

布団から出てこない悪魔が。


「悪魔ー。今日は寒くないわよー」

悪魔が引きこもるのは大抵寒くて寝袋「アクマイマイ」に包まっているのがデフォだけど、今日は様子が違う。

布団の中に入ってスマホをいじいじしているのである。

「ニンゲン、メンタルがお亡くなりです。今日はサボるのです」

確かに虚無の目をして……いや、いつもと変わらん。

「私は構わないけど。仕事は?」

「休みましたー、有休ですー。なんか最近使ってなかったのを思い出しましたー」

こっちに来た頃は半年ごとに使い切っていたような気が。

「立場が上ると休みも取れませんでした。おかしいです、出世するなら休みが増えないと」

日本人に聞かせたら発狂しそうなこと言ってるけど、コイツの性格考えると本音なんだろうなぁ。

「そもそも会社なんて誰でもできることをするためにあるんじゃないのですか?出世したら代わりにやってくれる人が増えて責任を取っとけばいなくていいんじゃないですか?」

やめたまえ、悪魔くん。

それ以上は燃えかねない。

「相変わらず怠惰なことを言ってますね」

狐が歯を磨きながら部屋にやってきた。

「ごんちゃんは良いのです!頑張れば頑張った分だけ出世したり、社持てたり!ボクはしがない会社員なのです、まだ副部長なのですよ!」

意外と立場高くない?

「ミミ殿、会社に勤めるというのはお給金のためだけではありません。仕事ちごとを通じて自分の格を磨くために……」

悪魔は布団の中に潜り込む。

「そんなビジネス書みたいな話は聞きたくないのです!ビバ・のんびり、ビバ・サボタージュ!」

本格的に荒れているなぁ。

「狐ちゃん、コイツがこういう時どうしてるの?」

「まぁ、放置ですね。別にそれがちに迷惑かかってません」

しれっと言ってのける狐になんとなく年の功を感じる。

「休めるときは休む!ボクの休息を邪魔させないのですー!」

メンタル死んでる割に元気なことで。

「じゃあ留守番よろしくね」

「……行っちゃうの?」

布団から顔を出してうるんだ瞳を向けてくる悪魔。

「え、私仕事だし」

「こういう時ってたまごガユとアニメのビデオが定番では?」

ビデオって。手に持ってるスマホを無駄にするな。

「こっちは急に有休なんか取れないの。自分のためにしっかり休んでおきなさい」

「……みぃ」


ウチには悪魔がいる。

ときたまネコっぽい悪魔が。

「早く帰ってきて下さいねー」

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