悪魔がウチにおりまして・420
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲン!刀が欲しいのです!」
面倒なことをよく言う悪魔が。
「今日の記録はここまでっと」
「ニンゲン!?あまりにも扱いがひどくないですか!?」
ちゃんと冬毛がしぼんだ悪魔からの小賢しい世迷言を無視しつつ、スーパーのチラシを吟味。
「悪魔、特売で豚ブロック売ってるけど、今度のカレー用にどれくらい買っとく?」
「冷凍庫開いてるから4つ!……じゃなくて!刀!刀が欲しいのです!」
流してあげようとしたのに蒸し返すんだもんなぁ。
「刀は持ってたら捕まっちゃうのよ」
私の言葉に悪魔は腕を組んでふんぞり返る。
「ボク知ってますぅ~。警察に届け出すれば持ってても良いんですぅ~」
アゴをしゃくりながらのたまうヤツにゲンコツを落とそうかと思うが、何でも暴力で解決するのは良くない。
わたしは良い大人なんだから。
そんなことを思っていると悪魔が鏡を向けてくる。
「なに?」
「自分の身の丈を改めて見るほうが良いかなって」
悪魔の口ってどれくらい伸びるのかしら?
「ひんへん!?ほふのふひはおむららいのれふ!」
(ニンゲン!?ぼくの口はゴムじゃないのです!)
なぁにを言ってるのか分かりませんなぁ?
「ただいま戻りまちた……おや、ニンゲン殿。ミミ殿がまた粗相ちましたか?」
狐、どちらが正しいかすぐに見定める目は好きよ。
「ごんちゃーん、ニンゲンがイジメるのですー」
「ミミ殿、ニンゲン殿はまだ未熟の身。合わせてあげねばなりません」
この二匹シバいておくべきか。
「で?原因は何です?」
「実はかくかくしかじか」
うんうんと頷きながら聞いていた狐。
ねぇ、悪魔。途中から狐の表情変わってるの気付いてます?
「……ミミ殿?刀って高いんですよ?んで、許可取るのって面倒臭いのですよ?ていうかウチに置くのですか?刀を?」
どうぶつ名物、ゼロ距離ブチ切れ。
鼻が毛に潜り込むのがデフォルトとなってます。
「ごんちゃん、近いです」
「ニンゲン殿は緊急の措置でおウチ貸ちておりますが、ミミちゃんは別にこっちに住む必要ないですよね?ていうか、家賃ってニンゲン殿は払ってますがミミちゃんは?居候ですよね?」
「狐、一応悪魔と折半です」
「ニンゲン殿、少々お黙りを。これはちつけです」
「ごんちゃん、怖いです」
「ミミちゃんも良い歳なんですから……」
ウチには狐がいる。
「脚がちびれた?腑抜けた精神がですね」
普段穏やかな子が怒ると怖いよねぇ。




