悪魔がウチにおりまして・417
ウチには悪魔がいる。
ゲーム機を放り投げている悪魔が。
飛んでいくゲームは見事クッションに収まる。
「むきー!また負けたですー!」
怒りながらも飛んでいったゲームを拾って再び充電器に繋ぐ。
「あんた、物は大切にね?壊れても知らないよ?」
まぁ、そのためのクッションぽーいなんだろうけど。
「悔しいのです、勝てないのです!おのれ、『銀の権三郎』!」
また慣れてるんだか、慣れないんだかわからない名前が出て来たな。
「はい、説明」
どうせ話したいだろうから聞いてあげましょう、どうせヒマだし。
「こんちくしょーは強いのです、正々堂々強いのです!だからみんな倒し違っていて、ボクが倒してやるのです」
説明が説明になってない。
「あー、『銀権』のことですね」
羊が横になりながらサボっている。
「仕事は?」
「太陽系外まで働きに行ったのでしっかりとした休暇です。部下に任せてます」
アンタ、部下居たの!?
「ひとり社長じゃ限界が来てますので。ほらぽん君のところから良いミミズが」
電話対応しているミミズを想像すると嫌だな。
「最近雇った覚えのないイモ虫が居るんですが、良いですよ。働き者で」
アンタの危機管理はザルなのか?
絶対ヤバいじゃない、そいつ。
「で、風の又三郎って?」
「恣意的な言い間違いは困ります。銀の権三郎……PVPゲーム、武者小路レーザー大戦に颯爽と現れた謎のプレイヤー……遠距離中心のバトル形式にも関わらず、一本の刀を以ってプレイヤーをばっさばっさとなで斬りに……狐獣人のキャラメイクと刀にしか頼らぬストイックさ、プレイヤーネームは権三郎なんですけど、刀の美しさから銀の二つ名を戴き『銀権』と」
「むきー!なんで遠距離武装を切るんです!?ていうか、ビームに接触判定付けるな!」
悪魔が珍しく真っ当にキレている……!!
「また負けたですー!!もう良いです!ボクはラーメン食べに行くです!」
そう言うと悪魔は地雷子に変身すると財布を持って出ていった。
「……出て行きまちたか」
クローゼットから狐がこっそり出てくる。
「おや、ごん君……いえ、『銀権』」
「な、なぜそれを!?」
ゴメン、隠れてた要素あった?
「まぁ、お子さまの夢を壊すのは本意ではないのでミミ君には黙っておきます。なんで遠距離スキル伸ばさないので?」
狐は顔を赤らめながら答える。
「このきゃらは3人目なのですが……手から離れる装備ですと、当たらなくて」
ウチには狐がいる。
まさかのクソエイムであった。




