悪魔がウチにおりまして・414
ウチにはモグラがいる。
どんっと仁王座りをしているモグラが。
和室で腕を組みあぐらを掻いて鎮座しているモグラ。
あの短い足でなんであぐらを掻けているんだろう。
「モグラ、どうしたの?」
「タヌキです。他の子が屈してもボクはタヌキと言い続けます」
それ、自分がモグラの自覚があるヤツの言葉なんよ。
「で?今日は何しにここに来たの?」
「……テレビ番組みたい」
なんならインタビューしてあげようか?
「今日はミミちゃんに頼まれた豆を持って来ました。『コロンビあ~ん』『ジュードー』そして『香椎』です」
名前の癖が強すぎない?
「仕方ありません、飲みましょう」
アンタが飲むのかい。
「それはそうでしょう。生産者たるもの、自分の作った作物はすべからく食べたいもの。しかしそれでは生きていけません。お金が必要です。具体的には種を買わないと食べられません」
食欲に支配されてませんか、モグラさん。
「ウチにコーヒーミルあったかしら?」
「ミミちゃんが使っているのが……ここだ」
モグラはキッチンの引き出し3段目、下からは2段目を一発で開けてミルを引っ張り出す。
「なんでアンタが知ってんのよ」
「ミミちゃん、昔からこの段が好きなんです」
よくわからんがそれで見つけるアンタもすごいわ。
「……あのけむくじゃら、ちゃんと洗ってねぇじゃねぇか」
一瞬声優が変わったのかと思うほど低い声が部屋に聞こえる。
「ミミちゃん、ちゃんと洗わないから前の粉が残ってます。これではきちんとした試飲になりません」
戻った、よかった、怖かった!
「ニンゲンさん、コレ洗ってくれます?ボク、流しに届きません」
モグラからミルを受け取り丁寧に洗う。
なんで従ってるかって?あの声聞いた直後だからだよ!
「乾くまでコーヒーはお預けです」
「なんで?キチぺで拭けばいいじゃない」
「ちっ……」
ねぇ、このモグラ今日怖い!
「これだからトーシロは……。ニンゲンさん、拭くとそこには雑味が残ります。逆さにして自然乾燥、これがマストです」
モグラに従い、ミルを逆さにして乾かす。
「……アンタも癖強いよね」
「ニンゲンさんほどでは」
失礼だよ。
悪魔が帰ってくる。
「ミミちゃん、コーヒーミルは一回一回洗うようにちゃんと教えましたよね?」
「ぽんちゃん、鼻が、爪が、足も踏んでます」
相変わらず怒り方怖いよねー。




