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悪魔がウチにおりまして・408

ウチには悪魔がいる。

何かをこさえている悪魔が。


仕事から帰ってくると部屋の中に何とも言えないさわやかな香りが部屋に漂っている。

「悪魔、何作ってるの?」

キッチンに居た悪魔に尋ねる。

「実は大納言を貰いましてー。ヨモギモチを作ろうかと」

そうか、この匂いはヨモギか。

「ニンゲン、ダイナゴンって怪獣居そうじゃないですか?」

そんなつぶらな目をするのはやめなさい。

言わんとしていることはわかるけども。

「ミミ殿ー。あずきが煮えましたー」

狐もミトンを付けて手伝っている。

……毛が入らないか心配になる組み合わせである。

「まさか生のあずきを貰ったのね」

「ですです。甘ーく煮たあんこに、ちょっと塩を効かせたヨモギモチ……あー、たまらんっ」

こういう甘味に対してのこだわりは素直に感心する。

うぱもよだれ垂らしてるし。

「ニンゲン、そのビニール取ってください」

言われた袋を取ると中から声が聞えてきた。

「タスケテー、タスケテー」

思わず悲鳴を上げて放り投げました。

「ニンゲン!?反抗期ですか!?」

「い、今!なんか!しゃべって!」

袋から飛び出したヨモギを悪魔が拾っている。

「コレは魔界ヨモギですー。ニンゲン、見るのは初めてです?」

見たことあるわけないでしょうが。

「ねぇ、助けてって言ってた!」

「これは生えている場所でよく聞こえた音をマネするんですよー」

それもそれで救いようが無いんじゃない?

「コノウラミー。ワスレヌー」

かわいい声で恨み言吐くんじゃない!

「トラウマになりそう」

「気にしたら負けですー。どうせ植物なんですからー」

悪魔はヨモギをすり鉢に入れてすりつぶしていく。

相変わらず「タスケテー」と言うあたり、本当に意思があるわけでは……。

「タスケテー。タスケテー。パエリアー」

今パエリアって言った!?

「……おぉ、変なこと言った」

悪魔も一瞬止まるくらい珍しいことだったみたい。

「ねぇ、それ本当に食べて平気なの?」

「別に嫌なら食べずともー」

悪魔はイヤミなく、それこそ心配するような声色でヨモギを擦っていく。

「……」


ウチにはヨモギモチがある。

「ニンゲン、結局食べるんですね」

製作過程なんて見なかった、いいね?


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