悪魔がウチにおりまして・405
なんでウチに居座るんですか?
警察に相談しようかしら?
「ニンゲン!担当さまにお抹茶を!」
「自分で点てなさい」
悪魔はキッチンから茶せんを持ってきてしゃかしゃかしてます。
なんでできるのよ。
「いやー、いつもすみませんねぇ。今回は水まんじゅうです」
すっかりウチに居着いた担当は和菓子を悪魔に差し出す。
「あの、溝口さん。こうも毎日ウチに来て仕事は大丈夫ですか?」
いい加減怖くなってきたので寄り付かないように生活の糧を盾に取ってみる。
「大丈夫です!羊のところに行くって言ってますから!」
……最近、羊のキューティクルが荒れてるのはそういうわけか。
「で、牛さまはどちらに?」
「居ないでしょ、昼間だし」
なんだったらあの牛、別にここに住んでるわけじゃないのを心得てもらいたい。
「担当!なんで牛さんのこと好きなんですか?」
それ、私も気になる。
一目惚れにしたってどこに惚れる要素あったのよ。
「えっとー、私牛タンが好きなんですね」
おっと、いきなりキナ臭くなって来たぞ?
「あの牛さまを見た瞬間にこれは良い肉だって……そろそろ突っ込んでくれないと私ヤバイ人じゃないですか?」
「大丈夫です、担当は充分ヤバいですー」
この悪魔、恐怖とか遠慮とかのバルブ取れてます?
「毛玉、次からお菓子無しだよ?」
「ニンゲン!ほら、謝って!」
貴様が私に謝れ。
悪魔に正座させて反省の書道を開始させる。
「とりあえずガチの理由は?」
「逞しい人に好意を抱くの、自然じゃありません?」
自分で持ってきた水まんじゅうを両手で持ちながら首を傾げる。
ダメだ、この生物を理解するのを諦めよう。
「牛さんは人じゃないのでー」
悪魔、半紙の量を減らしてあげましょう。
「良いですか、毛玉。愛は種族を越えるのです!」
ビシッと天に指を立ててポーズを取っている。
「ニンゲン!マズいです!このヒト何を言ってるか分かりません!」
「毛玉はお子さまだからわからないのです!」
「ゴメン、私もわがんね」
ウチから担当が帰った。
「今度牛さまが来たら必ずご連絡を!」
するか!
「ふぅ、びっくりしました」
クローゼットから牛が出てきた。
「居たの?出てくればよかったのに」
「ニンゲンさんはクマが家に居たら帰ります?」
絶妙なたとえはやめなさい。




