悪魔がウチにおりまして・399
ウチには悪魔がいる。
流行ものにすーーぐ乗ってしまう悪魔が。
「ニンゲン!魔法の修行をしましょう!」
何を言ってるんだ、コヤツは。
「この前こっちでとても面白いマンガを読んだです!『送りビト・エルフ』っていうの!」
子どもみたいなキラキラな目で訴えてくる。
ヒトなんだかエルフなんだかどっちかにしろ?
しかもまたギリギリを攻めたものだね。
「あー、それ面白いよねー。お休み」
「ニンゲン!?今の時間に寝るのはおばあちゃんですよ!?」
うるさいわねー、この時間が20時とは限らないでしょー?
「ニンゲン、今は晩御飯を食べたばかりです!太ります、牛さんになってしまいますー!」
「それ、牛に対して失礼じゃありません?処しますよー?」
牛が物騒なことを言ってる。
「やんのか、牛コラー!」
なぜか荒ぶる悪魔。
「虫の居所が悪いのかしら」
「牛の居所はいつもの通りです」
む!し!こいつらワザとやってないか?
「おや、おふたり。何に荒ぶっているのですか?」
狐が良いタイミングに帰ってきた。
こいつら止めてくれ。
「てぇーい☆」
狐が杖を振るとむぎゅっと何かに押しつぶされたように見えた。
……何が起きたのか、気にしてはいけないんだろうな。
「ふむ、ミミ殿は修行をちたいのですね」
震えながら正座している悪魔と不満顔な牛。
まぁ、巻き込まれですし?
「修行とは厳ちいですよ、まず身を清め、精神を整え、うんぬんかんぬん」
真面目な狐が修行なんて話聞いたらこうなることは予想できたよなぁ。
悪魔は足のしびれに耐え、牛は船をこぎながら時たま首を起こす。
「ところでミミ殿、魔法使えませんでした?」
「雷は、魔法じゃないので……」
足のしびれに耐え兼ね横になりながら答える。
おい、牛。完全に寝るんじゃないよ。
「似たようなものじゃない?」
狐も今日はおかしい。
「ごんちゃん!まほーと、はぅっ……」
いきり立った悪魔は、足を押さえて呻いている。
「ところでミミ殿はなぜ修行に興味を?」
悪魔は呻きながらマンガを取り出す。
パラりとページをめくる。
「……魔法、使いたい!」
影響早いのよ。
ウチには子どもがいる。
とても美しい目をした子どもたちが。
「私も含まれます?」
「んなわけないでしょ」




