悪魔がウチにおりまして・392
ウチには悪魔がいる。
なんか虚無ってる悪魔が。
「あー……」
悪魔がフローリングに仰向けに寝転がりながら目の上にタブレットを乗せて呻いている。
「……それ、見えてる?」
「見えてまーす」
なんで見えるんだよ。
「目を頭の奥に引っ込めればどうさもありませんー」
そこまでしたくない、てかできない。
手元でコントローラーを動かしているから本当に見えているようだ。
なんならゲームしてるのか。
「何してるの?」
「時間を溶かしてますー」
溶けるという表現はするけど自発的にやるのは暇つぶしって言わない?
「ニンゲン、なんでこんなに暇なのですか?暇というのは昼間のことなのですか?」
暇すぎて自分で何を言っているのかわかってないような気がするのは気のせい?
「そんなに暇なら狐ちゃんとかクモと遊んできなさい」
タブレットを床に降ろして口を結んでいる。
「ごんちゃんもくもちゃんもお仕事です。ニンゲンと違って暇じゃないんですよ」
今までゲームしていた小畜生に暇人扱いされることってこんなにムカつくのね。
「なら牛でも羊でもいるでしょ?」
「そのふたり、最近忙しいのか付き合い悪いのですよー。牛さんは本当に忙しそうなので文句ないですが」
そのあとなんとなく言わないあたり時間が取れない理由はお察しである。
そんなぐだったタイミングでうぱがふよふよ降りてきた。
「うぱちゃん、何して遊びますー?」
こいつ何かに触ることができないのでかなり遊べること限られるんだけど。
うぱは首を傾けながら悩んでいる。
口の中からひょいっと丸い球をいくつか取り出すと、お手玉を始めた。
「おー、うぱちゃんすごいですー」
実際に途中に口から球を徐々に追加して最終的に10個をふわふわ投げている。
「ニンゲン、すごいです!うぱちゃんすごいですー!」
悪魔が手を叩きながら目を輝かせている。
コヤツが楽しんでいるなら別にいいんだけどね。
「うぱ、それなんなの?」
口の中から出す球、その正体のほうが気になってしまう。
うぱはお手玉しながら口の中に戻していく。
そして手を口元に持って行き「しー」とするようなジェスチャーをした。
ウチには悪魔がいる。
うぱに弟子入りした悪魔が。




