悪魔がウチにおりまして・4
ウチには悪魔がいる。
居候の癖に、もりもりどんぶり飯を食べる、悪魔が。
「ニンゲンー」
「何?悪魔」
悪魔が郵便ポストから戻ると、手にはチラシを一枚持っていた。
「このお好み焼きって何ですか?」
「お好み焼き?えっと…」
説明しようとするが、ふと口から言葉が出ない。
お好み焼きを説明する、この難しさにどうしたらいいのかわからなくなったからだ。
「えっと、小麦粉と好きな食べ物を混ぜて焼いた…もの?」
我ながらざっくりした説明である。
「食べ物!好きなものならなんでも入れていいのですか?」
悪魔は両手を広げながらぴょんぴょんと跳ね始める。
相変わらず食い意地の張ったやつである。
「あんた、好きな食べ物なんかあるの?」
「呪いま」
「好きなら名前を覚えなさい」
そろそろ、生産者に怒られる気がしてきているその呼び方を嗜める。
変に気を使わせる悪魔め。
「そういえばこっちの食べ物で栄養取れるの?」
私は悪魔の食事に明るいわけではないが、よく海外に行くと食が合わないという話を聞く。
同じ地球でも起こるのだ。
次元の壁を越えている悪魔が栄養を取れているか、心配になる。
「大丈夫です、ご飯で栄養は取ってませんから」
一食で2合半のコメを消費しているヤツの口から出たとは思えない発言にくらくらする。
思わず「悪魔 退治方法」を検索しかける指を止めた。
6秒で怒りは消える、6秒で怒りは消える、6秒で…よし、消えた。
「それならなんでいつもいつもご飯食べてるのよ」
ウチのコメを毎日大量消費をしおってからに。
「ご飯は食べると幸せな気持ちになりますから」
一切の悪意を感じられない笑顔に、本当に悪魔か?と疑問を持つ。
「そうは言っても納豆だけだとバランス悪いよ。お肉もお魚も野菜も食べないと」
「あー、お肉好きです」
悪魔はまたぴょんぴょん跳ねながら手を広げる。
「お肉って何が好きなの?」
「えっと、豚と、牛…あと鶏?」
意外と普通にスーパーに並んでいるセレクトで肩透かしを食らう。
「てっきり、ヤギとか羊とかいうかと思った。ほら、悪魔に捧げられてそうだし」
映画などで悪魔を呼び出すときにそのような動物を使っているのを見たことがある。
悪魔は目をじっと見て
「ニンゲン…ヤギとか羊とか食べたら、共食いっぽく見えませんか」
…それな。
ウチには悪魔が居る。
自分の見た目をしっかりと理解して居る、悪魔が。