悪魔がウチにおりまして・383
ウチには悪魔がいる。
微妙に振動している悪魔が。
「ニンゲン、おはようです」
「アンタ、どうしたの?」
さっきから悪魔が震えている。
普通に震えているだけならなんの問題も無いのだが、輪郭がブレるほど振動しているなら話は別。
歩きながら床に振動音が響くほど。
本当になんでこんなことになってるのよ。
「ほら、急に寒くなったじゃないですか」
そうなのよね、日本から秋が消えたとか言われてるけど。
「そのせいで夏毛のまま冬に突入しました」
なにそれ、その振動は身震いってこと?
「令和のあんちくしょーは今度指導が必要です。ニンゲン!令和ちゃんにはどこに行けば会えますか!」
それ、私も知りたい。
夏の暑さに文句付けたい。
「そんなに寒いなら服を着なさい」
悪魔は振動を続けながら首を振る。
「ニンゲン、寒い時に服を着るとどうなりますか」
「温まる」
悪魔はぴょんと飛んで私の頭にスリッパを乗せる。
なんでよ!?
「良いですか、寒いということは空気も乾燥してます。カピカピです。そんな乾燥した空気でこのもこもこのボクが急に厚着なんかしたらどうなりますか」
「着ぶくれ?」
再びスリッパを乗せに来る。
チョップではたき落とす。
「痛い」
「アンタが悪い」
頭を押さえる悪魔が少し涙している。
「静電気ですー!ばちばちするとキューティクルが痛むのですー」
そんな美意識アンタの口から初めて聞いたわ。
「そんななら静電気逃がしてから服着ればいいのに」
「逃がす」
キョトンとする悪魔。
「これこれ、除去シート。これ触ると静電気が逃げ……」
悪魔は言葉の途中に除去シートに触れるとみるみるしぼんで振動が強くなった。
「なんでさ」
「さ、寒いのです!?早く布団を!」
ウチには悪魔がいる。
コートを着て安心顔の悪魔が。




