悪魔がウチにおりまして・378
ウチには悪魔がいる。
何事も唐突に始める悪魔が。
「インゲン!身体固くなってないですか?」
Nが無かった気がするけどスルーしましょう。
「固くは、なってないはず」
「そう言っているインゲンほどコリを放置しているモノです!さ!横になるですー!」
とりあえず頭スリッパするとして。
「で、これから何をしたいの?」
スリッパ悪魔に従い、うつぶせに横になる。
「これからあくマッサージをしていこうかと!」
「アンタ、絶対にそれを言いたかっただけだよね?」
まぁ別に構いやしないんだけどさ。
「ちなみにどんなマッサージなの?」
「指圧です!」
「……指、どこ?」
アンタにあるのはヒヅメでしょう。
「細けぇことは良いんです。手ごねハンバーグだって指で練ってますし、なんなら機械にゅるにゅるですよ」
企業様のネーミングにケチ着けない。
アンタだっていつもウチに居るわけじゃないでしょう?
「ニンゲン、お痒いところはないですかー?」
悪魔、それたぶん美容院だわ。
「やるならちゃんとマッサージしなさい?」
せっかくの休日にアホの付き合いをしているんだから、時間を無駄にさせないのー。
「お客さんはワガママなのですー。そうしたら踏むですねー」
おい、指圧はどこに行った。
しかし、悪魔の体重は思ったよりも軽く、踏まれているとほどよい圧力がかかる。
正直、気持ちいい。
「ところでなんでいきなりマッサージを?」
「いやー?日ごろからニンゲンにはお世話になっていますのでー」
……怪しい。
この子がこんな殊勝なこと言う?
しかもマッサージ?ありえんだろう。
今日の私の行動を思い出せ、立ち寄ってない場所、普段していること……料理!
むくりと起きると悪魔が転がり落ちる。
キッチンに向かう私の背から「ヒィっ」って悲鳴が聞こえる。
ビンゴ……したくなかったぁ。
キッチンを見ると紫色のゲルがコンロにべったりとくっついていた。
「あくまさーん?」
「ニンゲンさまー、なんでしょうー?」
「説明」
自主的に正座したのでカカト落としは勘弁した。
「珍しい食材が手に入りまして。調理方法を確認しながら煮ていたら噴火しました」
「後始末。今日の晩御飯はアンタの奢りの出前」
「みー」
みーじゃないんだよ。




