悪魔がウチにおりまして・376
ウチには悪魔がいる。
勘違いをぽーいする悪魔が。
「ニンゲン、カニデンスって何ですか?」
逆に聞きたい、それはなんだ。
「…………エビデンスのこと?」
「あー、それですー。ほらエビもカニも似たようなものなので」
エビデンスのエビはたぶん甲殻類のことを言ってないと思うんだけど。
「たしか、根拠とかそんな意味だったはず」
詳しくは知らない、スマホで調べなさい。
「ふむふむ。ニンゲンの世界ってなんで言語統一していないのでしょう。不合理極まりないです」
それを言い始めたら、神話に遡るけど?
「あれじゃなかった?神に至る塔を立てちゃったからって話じゃない?」
悪魔はキョトンとしたあと盛大に笑いだす。
「ニ、ニンゲン!そんな、非科学的なこと信じてたんです!?」
だまらっしゃい、幻獣種。
「うるさいわねー、そっちの世界の言葉はどうなのよ」
顔がほのかに熱くなる。
コイツから正面切ってここまで笑われるのは癪に障る。
「それにはボクがお答えしましょう!」
そんな見得を切りながら登場したのはお牛さん。
……雰囲気に飲まれ「お」を付けるとは屈辱。
「おじちゃーん、水あめちょうだーい」
「あいや、またれよ。よく練ってから食べるんですよ」
そういうと牛は割りばしに巻いた水あめを悪魔、クモ、うぱに渡していく。
えっと、紙芝居でも始まるのかな?
「えー、時は悪魔暦310年、あ、ここさてんをもじってサタンってことで」
要するにフィクションね。
「天才科学者、コトーバ・クッツケールが全自動翻訳機を開発しました、おしまい」
終わったー!?
「おじちゃーん!水あめ足らなーい」
「あいや、待たれい」
牛は面倒になったのか、瓶ごと悪魔に渡す。
「で、本当のところは?」
「話した通りですー。名前とかは違うんですが、なにぶん種族が多いので言葉の統一無理でした」
ゆっくり悪魔を見ると、こそこそと逃げ出そうとしている。
「悪魔」
「はひ!」
背筋ぴーん。
「水あめはクモとうぱに渡しなさい」
「……甘いの好きです」
足をだんっと踏みつけるとさらにぴーん!
ウチには悪魔がいる。
「ご容赦をー、ご容赦をー」
セルフ玉砂利している悪魔が。




