悪魔がウチにおりまして・374
ウチには悪魔がいる。
「ぎゅーにゅーとこっぺぱーん、こっぺぱーん」
「やかましい」
「なんですか!耳コピのために歌っていたというのに!」
「よりにもよってその替え歌で覚えることは無いでしょう」
リコーダーの合いそうな替え歌を歌いおって。
「いいじゃないですかー。どうせ歌っても覚えられるわけないなら楽しまないとー」
さっきまで言ってたことと矛盾してるの気付いて?
「またオカリナ始めたの?」
耳コピというからにはなにか楽器だろう。
コイツ、前にオカリナやってたことを思い出す。
「ですです。楽譜の曲はそれなりに覚えまして」
そういうとオカリナを咥えて「仰げば尊し」を吹き始める。
しかも悪魔の姿で。
「ヒヅメ、どうやって吹いてるの?」
「削りました!」
悪魔は手を広げた。
ちょうどオカリナを押さえるところを出っ張らせるように丸い凸。
なんという執念。
「そんなにオカリナ好きだったのね」
「楽器練習の良いところは練習すれば必ず上達するのです……。裏切らないのです」
悪魔の目が虚ろになる。
何があったのか、怖くて聞けやしない。
「ただいま戻りまちた。ミミ殿、おかりな上手になりまちたね」
狐がスーツ姿で帰ってくる。
クモが駆け寄ってバッグを受け取る。
「狐ちゃんなんつー恰好してるの?」
「今日は取引先との会合でちて。がしゃどくろは頭が固くていけません」
なんか大妖怪の名前で無かった?
「ごんちゃーん!どくろさん、元気でしたー?」
「相変わらず曲がらない方でちた。骨なので曲げようがないのですが」
……笑うところ、なのかなぁ?
「そんな妖怪と会合って」
「ニンゲン殿、悪魔と暮らちているモノが言っても説得力が」
痛いところを突いてくるなぁ、この狐。
ぴーぴーぽ、ぴっぴぽー、ぴっぴぽー。
悪魔こっぺぱん吹かない。
「妖怪もこんななの?」
「まさか。ちゃんと悪しきモノを食べてます」
食べてるのかぁ。
「まぁ、条約をきちんと結んでますので、悪いことちなければ安心です」
ぴっぴぽー。
今はこの音が心安らぐね。
ウチには怖い狐と緩い悪魔がいる。
クモもなんか鎌研いでるし。




