悪魔がウチにおりまして・372
ウチには悪魔がいる。
家の真ん中であぐらを掻いている悪魔が。
またかよ！？と思うじゃない？
今回居たの、専務なんだわ。
あまりにも久しぶり過ぎて不法侵入かと思った。
……いや、普通に侵入は侵入なんだけど。
「……お茶、出します？」
「気にしなくていい。ミミの様子を見に来ただけだ」
この時間、出勤してませんかー？
「あの、息苦しいです」
「私は気にならないよ」
自覚あるんかい、自分が空気重くしてるの！
「いうて、あの悪魔、何にも変わってないですよ？」
「だろうな、アイツが裏表作れる性格でないことは……」
「せせせせせ！専務！？」
話の途中、羊がのけ反りながら叫んでいる。
「おや、ヤギ……いや羊に改名したのだったな」
「お、覚えていただいていて恐縮です！」
そういえば、元上司だったねー。
「そう固くなるな。お前も一国一城の主だろう？」
「皆皆さまのおかげで生きられております！」
緊張の度合いが重いなぁ。
「ところでミミは職務をこなしているか？」
「み、ミミ君でごじゃりますか？」
羊のキャラが壊れた！？
「そう。ニンゲンの世界に溶け込み、堕落のタネを収集する職務は」
羊、目を泳がせる。
そりゃ普段からあんな風に遊びほうけてたら弱み握りなんてできないでしょうに。
「そうか。きちんと働いているか」
専務って目が節穴でも務まるのね……？
「そうかそうか、もしサボって給料を甘味に費やすことしかしていないようであれば査定も考えたところなのだが、熱心に職務を全うしているか」
違う！？
これは全部知ってて詰めてるパターンだ！？
「ニンゲーン！りんご飴、りんご飴が……部屋を間違えたのですー」
間違えてないよ！
むしろ空気の読まなさ含めてパーフェクトの帰宅だよ！
「ミミ、久しいね」
「あなたは、だぁれ？ボクはドコ？」
テンプレの記憶喪失なってるんじゃないよ。
「そろそろ査定の時期だな、報告書楽しみにしているよ」
その言葉を残すと専務は忽然と消え去ったのだった。
ウチには悪魔がいる。
「に、ニンゲン！？お菓子をあげるから弱みを、弱みを寄こすです！」
そんな逆ハロウィン、いりません。
