悪魔がウチにおりまして・371
ウチにはモグラがいる。
部屋の真ん中であぐらを掻いているモグラが。
いや、正確にはあぐらを掻きたいんだろうという座り方なんだよね。
脚が短くて届いてないけど。
なんか目を閉じて座禅をしているように見えるけど、他人の家でやるなよなぁ。
「ニンゲンさん」
「なに?モグラ」
急に話しかけてきたのでびっくりした。
「タヌキです。言い続けます」
最近羊が羊になったからね。
「で、そこのモグラはなんでウチのど真ん中に居るの?」
「タヌキだもん……」
「タヌキさんは、なんで居るの?」
泣きそうになって慌てて言い直す。
モグラの顔がぱぁっと明るくなる。
「ごほん。この前の運動会、ニンゲンさんのお弁当が大人気だったと聞きます」
あー、あったね。
悪魔が何も食べられなかったってやつ。
「尽きまして。から揚げの作り方を聞きに来てやりました」
さっきそのまま泣かしておけばよかった。
「から揚げ、作ったことなかったっけ?」
「食べたことは何度か。でも作り方は知りません」
そうは言っても、別に特別な作り方してないんだけど。
「タレに浸けて揚げるだけよ?」
「タレ」
目が訴えている。
中身を教えろ、と。
口に出しなさいよ。
「えっと?スーパーで買ってるからちゃんとは知らない」
「えー。職人として手ずから作らねば」
私は職人じゃないんだよ。
「分量は知らないけど、しょうゆとお酒、あとしょうが?」
「……しょうが!?」
モグラが目を真ん丸にして身を乗り出す。
あまりのオーバーリアクションに飲んでいたお茶を咳込んでしまう。
「びっくりするでしょう。しょうが、知らないの?」
「しょうがはこっちでは毒扱いです。消毒されてしまうのです」
ばい菌か何かかい。
「迷信だったね、みんな食べたんでしょ?」
「しょうがかー、しょうがかー……」
まぁ、今まで信じてきたことを受け入れるの難しいよねー。
「一緒に作ってみようか?」
家にあったしょうがをすり下ろしながら一緒にから揚げを作り出す。
最初はビビってたモグラもキレイに皮を剥けるまでに至りました。
食卓には山盛りのから揚げ。
「しょうが!?」
悪魔、お前もか。




