悪魔がウチにおりまして・368
ウチには悪魔がいる。
しょっちゅう怪しいことをしている悪魔が。
「何してんの?」
仕事から帰るとリビングで白い防護服とマスク、水泳用ゴーグルを装備してビーカーを火にくべている悪魔。
というかビーカーとアルコールランプってどこから持ってきたのよ。
「ニンゲン!こっちの世界には不思議な食べ物があるのですね!」
悪魔は子どものころ食べた駄菓子を持っている。
「この『こねこねこねるん』、とても面白いのです!」
若干ギリギリを攻めている感じが否めないネーミング。
そしてうぱはさっきから腕をぐるぐる回している。
糸巻かな?
よく見たらクモがおしりから糸出してるし。
「で?そんな実験みたいなことして何を作ってるの?」
食品をビーカーで作るなよ、と思うけどキレイに洗っているなら鍋もビーカーも変わらないでしょ。
「聞いた話によると、デンプンを入れるともこもこ膨らむらしいのです」
デンプン?そんな食べ物あったかな?
「もしかして重曹?」
「あー、それかもです。白いから間違えました」
絶対コイツ砂糖と塩入れ間違えたことあるでしょ。
「失敬なー。ボクはちゃんと入れ間違えないように砂糖は茶色いの使ってますー」
つまり前に間違えたことあったのね。
「カルメ焼き、作るの難しいよ」
大抵ちゃんと膨らまないし。
「軽めに焼くのですね」
「ちゃう」
そういうボケはいらないのですよ。
「お!膨らんできたのですー!」
待て、確かデンプン入れてたのよね?
なぜ膨らむ?
むくむくとビーカーの中から立ち込める茶色い泡。
ビーカーから溢れる量になりながら倒れることなく膨れ上がり……。
『はぁい』
「しゃべったですー」
なんでだよ。
なんでカルメ焼きがデンプンで膨らんで低い声であいさつするんだよ。
『我を呼んだか、願いを3つ叶えてやろう』
面倒だからそういう不思議は止めて?
「カルメ焼きが食べたいですー」
『カルメ焼きとな?それは願い3つ分使わねば仕入れられぬ』
おい、その願い軽いな。
「大丈夫ですー。カルメ焼き持ってこーい」
『では叶えてしんぜよう』
安い魔人は手にめっちゃ力を込めてカルメ焼きを作る。
肩で息をしながらそのままビーカーに消えていった。
「ちっちゃいのです」
ビーカーの中にはカルメ焼き。
3匹は仲良く分けてました。それを食べるかぁ……。




