悪魔がウチにおりまして・363
ウチには悪魔がいる。
珍しくゲームにハマっている悪魔が。
「悪魔、アンタゲーム持ってたの?」
悪魔は最近、ご飯を食べ終えるといそいそとゲームを始める。
しかもタブレットではなく、ちゃんとしたゲーム機だ。
「ゲームは良いですね。課金要素がありません」
……なんか突っ込むと闇に触れそうだからスルーしておこう。
「あと、PVPもありません。あったとしても課金の額が物を言うような仕様じゃありません」
わかった、わかったからそのハイライトが消えた目を向けるのやめなさい。
「ところで何やってるの?」
話を逸らさねば。
コイツが闇落ちするとたぶん狐やモグラみたく怖いのが目に見える。
「七大大戦ですー」
聞いたことない。
「えっと、七つの大罪のそれぞれの陣営を選んで他の大罪を全部倒せば勝ちですー」
なんか、ずいぶんと欲にまみれたテーマだこと。
「おどろおどろしいやつ?」
「いーえ。子どもに大人気です」
子どもが大罪に属するって世も末じゃない?
「このゲーム、ネット通信で協力できるのです。PVPがないのでDLCを買わなくても……」
選ぶ理由が悪魔っぽくないんよ。
「アンタはどの罪人になってるの?」
「ニンゲン、ボクらむしろ司る側なんですが」
ゲームやってる時点でアンタも罪人、汝は罪人よ。
「細かいことは良いから。暴食?怠惰?」
強欲って線もあるかなぁ。
「ボクのこと、何だと思ってます?ボクは憤怒族なのでー」
「……もしかして、本当に悪魔の所属だったりします?」
悪魔はゲーム画面に目を落として答えない。
答えてよ!怖いから!
「ニンゲンに所属言うと、揉めそうなので……」
そんな厳重なカテゴリか?
「ほら、別にみんな仲が良い訳じゃないので。別に各々はいい悪魔なんですけど、テリトリー重なっちゃってるところがね」
悪魔がムラ社会ということなんて聞きたくなかった。
「このゲーム、同じ陣営だと協力プレイできないのでー。まぁ、都度変えられますがプレイスタイル次第ですね」
「へぇ、私もやってみようかなぁ」
「ニンゲンもやるなら一緒にやりましょー。でもオフォン持ってます?」
「本体買えばできるでしょ。たまにはアンタの遊びに付き合ってあげようかなって」
その言葉を聞いて悪魔は無表情になる。
「……たぶん後悔します」
さっそくゲームをプレイしてみる。
「……チュートリアル、強すぎない?」
「だから言ったのに」
なんでニンゲンが悪魔を倒すゲームなんかをアンタやってんのよ!




