悪魔がウチにおりまして・359
ウチには悪魔がいる。
サイリウムを振り回している悪魔が。
「うぉぉ!」
騒ぐな、近所迷惑です。
しかしこやつ等の声を聞けるのは私だけ、苦情が来るわけも無いのが悲しい。
「アンタがここまで熱上げるの、珍しいわね」
「ニンゲンもMV見ますか!?今日新着の『恋はデストロイ』も神曲ですよ!」
まったく成就しそうにない歌なんですけど?
「ほら、ニンゲンもコレ!」
悪魔は色の変わるサイリウムを渡してくる。
「ボクはピンクにするので、ニンゲンは黒にしてくださいね」
黒の光って存在するの!?
「今日のご飯は……おや?『墓石ん』ですか?」
牛がのっぺりウチに入ってくる。
なんか物騒な名前言ってたけど?
「そのぼせきんって?」
「どう聞き間違えました?『はかいしん』です。まぁ、いわゆる地下ドルですけど」
そんな子たちが普通にMV出してるんだ?
「ニンゲンさん、最近はネットのおかげか、せいと言うべきか。とにかく個人でプロデュースできるようになりましたので」
牛がアイドルプロデュース語ってる……。
仕事して、違和感。
「ちなみにリーダーはピンク、そのほかは群青、黒、ビリジアン、そして金色です」
統一という言葉は忘れ去られたようである。
「牛は推してるの?」
「いいえ、ボクは若い子が頑張っているの見るだけで眩しくてねぇ」
仕事しろ、違和感パート2。
「ただいま戻りまちた」
狐が仕事から戻ってくる。
「狐ちゃん、悪魔が騒いでるけど黙らせる?」
「ニンゲン殿、べるとをぺちんするのは某も怖いです」
これは失敬。
「それに他者の好きなことを咎めるのは良くありません。好きなことはその者の生きる活力になります。なので……」
至極真っ当なことを言っているように見えるんだけどさ。
「金色の鉢巻巻きながら言われても説得力が……」
「新作のえむぶいは1週間も前からりまいんだーちてました……!」
強火だなぁ。
ウチでは私にしか聞こえない大騒ぎが続く。
「ご飯食べちゃうよー?」
「食べます」
……花より団子だったかぁ。




