表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/1121

悪魔がウチにおりまして・35

歯医者にクモとネコがいる。

保健所に言いつけてやろうかしら。


「無理です、もう帰ります」

私の言葉にクモが猛烈に頷いている。

「どうしたんだい、ニンゲン」

「帰るなら歯を磨くように伝えるように」

ネコと歯医者は口々に言葉を飛ばしてくるが、そんなことはどうでもいい。

「なんでこうウチの周りに変な動物しかいないんですか」

「もしかして僕も変な動物に入ってる?」

「今、筆頭候補です!」

ちゃんと順位付けをすると角が立つから言わない。

私の中でクモが1番一般に近いと言っておこう。

「まぁ、ニンゲン。変な生き物に囲まれるキミも充分変だから」

「だまらっしゃい、保健所に行きますか」

「キミなかなかアグレッシブだね」

歯医者は余裕の表情で紅茶を啜っている。

「あなただけでも手一杯なのにこんなしゃべるネコ出てきたら退治したくなるでしょう」

「普通は逃げると思うけどにゃ」

「いきなりキャラ付けをするな!」

ネコの語尾が急に変わった。

ネコだからにゃーと言えば怪しさが消えると思うなよ。

「ならばニンゲン、ひとつ安心させることをお伝えしよう。キミの家に住むつもりはない」

「…よし、話を聞きましょう」

これ以上ウチに不思議生物が増えないというのならまだ…。

ここまで考えてなぜウチで引き取る前提で考えていたのかということに嫌気が差してしまったが。


「で、わざわざなんのために顔を出したんだい?地獄の」

「そう呼ばないでよ、堕天の」

「キミが僕のことを『堕天』と呼ぶからだろう」

2人は笑顔でいるものの話している内容は仲が良いようにはまるで見えない。

「あのー、もう帰っていいです?」

結局顔を出してきて場を乱しただけのネコに呆れながら扉に向かう。

「むしろキミを助けるために出てきたというのにご挨拶だねぇ」

「この歯医者さんに来なければいいことが分かったので。私は平和に暮らしたいだけです」

「言われているよ、堕天の」

「むしろキミにだろ、今の皮肉は」

ここに来て初めて歯医者の意見に同意せざるを得なかった。


『別に害を成すつもりはないよ。逆に治療が必要になったらよろしく』

歯医者はそんなことを言いながら何事も無いように見送ってくれた。

建物の外に出た瞬間、背中に汗がびっしょりだったことに気付く。

「クモ、あいつらどちらもやばいよね」

再び思いっきり頷くクモ。


来なければよかった。

これが偽らざる本音だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ