悪魔がウチにおりまして・358
ウチには悪魔がいる。
妙なところがかわいい悪魔が。
「ニンゲン!ケーキを買ってきたのです!」
悪魔は胸を張ってケーキの箱を見せびらかす。
「どうしたの、そんなの」
普段お菓子を買う時はわざわざ自慢などしないというのに。
「どうしたのって。誕生日だから買ってきたのですよー!」
なるほど。
カレンダーを見ると確かに10月4日。
そう、私の誕生日である。
わざわざ祝うために買ってきてくれたと思うとかわいいところもあるよね。
「ぴったりの紅茶を買ってくるので!それじゃ!」
そういうと悪魔はケーキを冷蔵庫に入れてそのまま飛び出して行った。
ふむ。
すぐ食べるのに、わざわざ冷蔵庫に入れることも無いだろうに。
ケーキを引っ張り出し、中身を確認すると大きないちごのショートケーキ。
真ん中に「おたんじょうび・おめでとう」とチョコプレートにかかれている。
そのケーキを見たうぱは飛び跳ねて写真を撮るマネをしている。
妙に現代にかぶれてきたな、この子。
眠っていたクモが降りてくる。
「クモ、すごいでしょ。悪魔もこういうところかわいいよね」
クモは首を傾げる。
誕生日の概念、無いのかしら。
悪魔の誕生日には私がケーキを買ってあげないと。
せっかくなので帰ってきた悪魔とすぐ食べられるように切っておこう。
包丁を入れようとすると、クモが慌ててケーキを取り上げた。
「クモ!イタズラしちゃだめ!崩れたら大変なんだから!」
この子までこんな冗談するようになったのは悪魔のせいだ、あとでしっかり叱らないと……。
「ただい……に、ニンゲン!?何をしてるです!?」
紅茶を買ってきた悪魔血相を変えて包丁を持った私に叫ぶ。
「何ってせっかく買ってきてくれたケーキ食べようと……」
「ホワイ?明日のケーキをなぜ今日食べるです?」
クモ、胸を撫で下ろしてケーキを悪魔に渡す。
「明日?だって誕生日は今日でしょ?」
「何言ってるですか、ボクの誕生日は10月の5日、明日ですよ?」
……つまり何?
この子、自分のケーキを自分で買ってきてたの?
「あんた、私の誕生日、知ってる?」
「そういえばニンゲンの誕生日、いつです?その時大福買ってあげます」
今日だよ!落差ヒドイな!
ウチには悪魔がいる。
「……だ、大福、買ってきます、か?」
「いいよ、明日そのケーキで一緒にお祝いしよ?」
今回のMVPはクモでした。




