悪魔がウチにおりまして・353
ウチにはモグラがいる。
なぜか、びしょ濡れのモグラが。
「ウチ」と言ってももちろん今まで住んでいた家ではなく、狐ビル。2階、角部屋。なんなら羊の隣。
問題起こした時の連帯責任追うんだって。
「なんで私が?ちゃんと家賃払ってるのに?」
まぁ、諦めて。
「濡れました」
話は訪ねて来たモグラに戻る。
「ミミちゃんの家に行きました。そうしたらずぶ濡れです。何故でしょう?」
丁寧な口調だけどキレてるね、これは。
「悪魔。モグラに水浸しなこと連絡したの?」
「タヌキです」
「できるわけないじゃないですかー。タブレット死んだんですよー。あと13回支払い残ってるですよー?」
地獄のような情報、ありがとね。
「ちなみにボクも電卓がダメになりました。15桁計算できるいいやつです。で?なんでボクは水浸しですか?」
モグラ、鼻がめり込むくらい悪魔に近付いている。
悪魔のせいじゃないんだから許してあげなよ。
「おや、モグさん。こんちゃー」
緩いあいさつと共に牛がタンスを運ぶ。
ひとりで持ってるあたり、見た目通りの力があるんだなぁ。
「牛肉さん」
「怒ってる時ほど冷静にならないと身を滅ぼしますよー」
……対応が大人だ。
「で、プチモグラ。なんでそんなに怒ってるんです?」
……子どもの口喧嘩だ。
「ボクは知りませんでした。天井が抜けて引っ越していたことを」
まぁ、昨日の今日だ、致し方あるまいよ。
「いつもの通り、道を通り進みました。普段よりぬかるんでいたのは認めましょう」
ふむ、水が流れ込んだんですね。
「不思議に思っていましたが、そのまま進みました。問題はここからです」
そうね、問題は感じないものね。
「扉を開けると、そこは浴槽の底でした」
……悪魔ー!?
「……さ、さぁ、新しいローンをタブレットで買いに行かないと」
逆だよ、しかも分かりづらいよ!
「さて、この時誰が悪いのでしょう?ぬかるみなんてわかりやすい違和感に気付かず扉を開けたボクか。それともそんなところに扉を繋いだ誰かか」
ついに自分の鼻を曲げるほど悪魔に密着している。
悪魔、大量の汗を流している。
「ところでミミちゃん。あんな、出てきた者が濡れるしかない場所に扉を繋ぎ直した者はどなたか、ご存じではないでしょうか」
怖いんだよ、モグラ!
その後の密着質問は20分以上続いた。
モグ……タヌキは絶対に怒らせてはいけないんだと心に決めるのだった。




