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悪魔がウチにおりまして・347

ウチには悪魔がいる。

妙なものを作り出す悪魔が。


「何作ってるのー」

朝から庭にガスコンロを取り出して鍋で何かを煮ている。

もうもうと立ち込める煙の前で鍋を混ぜる地雷子はとてもシュールだ。

「賢者の石でーす」

「なるほどね、気を付け……賢者!?」

待て待て待て。

ファンタジー御用達伝説アイテムを家賃7万の安アパートの庭先でぐつぐつしてるんじゃないよ!

「ニンゲンも賢者の石、作りますー?」

聞き間違えではない、ちゃんと賢者の石だ。

「そんな危ないもの煮詰めないで!」

確か賢者の石の材料はニンゲンって聞いたことがある。つまりこの子は、ヒトを……。

「えー、アシタバって危ないです?」

なんて言いました?

「アシタバ。先にアクを取らないと良い石ができないのですー」

「悪魔さん、悪魔さん。他の材料聞いて良いですか?」

悪魔はビニールからごそごそと中身を取り出す。

「アシタバの他は、備長炭の粉と鶏ガラ、サメのヒレ。後はマッチクズですー」

本当にそんなもんで賢者の石作れんの!?

「ねぇ、賢者の石の材料ってニンゲンだってマンガで読んだんだけど」

悪魔は空を見上げて。

「昔はそうだったんですけどー。コスパが合わなくなって。ほら警察優秀になりましたし」

昔はやってたんかい。

うすら寒いものを覚えながら後ずさり。

「でも賢者の石が無いと生活できないですし。そんな時植物学者のユングドラシル教授がアシタバを原料にした精製方法見つけまして」

心理学者か神木か分からない教授、ありがとう!

「石ないと生きられないって?」

そんな伝説アイテムをいつも使うってこと?

「あー、これ食べると10日間絶食ができて。開墾するときに必ず持って行くのですー」

賢者の石、非常食ですか!?

「悪魔、どっかいくの?」

「いえ、部下が。今度絶対凍土に派遣しなきゃいけなくてですね」

そこはかとないブラック感が漂ってますけど!?

「ニンゲンも食べてみます?美味しいですよ?」

「結構です……」

なんか、食べたらいろいろ終わる気しかしないから。


ウチには悪魔がいる。

明くる日、アシタバを煮た匂いでめっちゃ苦情を貰ってた悪魔が。

家主の私?

ちゃんと同じく厳重注意ですよ!!

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