悪魔がウチにおりまして・346
ウチには……。
「ニンゲン……ここからは切った張ったの鉄火場、踏み越えてはっ」
さとて夕飯の支度っと。
「ニンゲン!?ボクをカーペットにして進んで行くとは何事です!?」
「変なこと言って道を塞ぐアンタが悪い」
もこもこしてて歩き心地が良かったのはナイショです。
「で、今度は何?鉄火場って言ってたけど」
「そうだ!ジャパニーズ・ヤクゥザって強いのですね!」
……なんて?
「ミミ殿がさっきまで任侠映画を観ていまちて。某も付き合っていたのですがちんぷんかんぷんで」
狐にわからない任侠?
アンタ、日本産の怪異よね?
「その表現は如何かと」
「すごいのですー!マッフィがレーザー銃で攻め込んでくる中、サムラァイ・ブレイドゥでレーザーを跳ね返し!」
それ本当に任侠?ハリウッドじゃなくて?
「某もそう思っているのです」
狐はこめかみあたりをぐりぐりしている。
記憶から消したいのだろうか。
「ごんちゃんは浪漫がわからないのですか!」
悪魔は襟を半分脱ぐ動作をしたが、そもそも服を着ていない。
「自分の命を省みず、家族を……弱気を守る男!これに憧れずして薩摩男児を名乗れません!」
「アンタ、薩摩も男児でも無いでしょうに」
地雷子フォルム考えると女の子でしょ、コイツ。
「血の問題ではありますぇん!心意気の問題です!」
いたなー。
昭和に任侠映画観たら、自分も強くなったと思っちゃうヒト。
「ミミ君が興奮してますね、どうしたんですか?」
ひょっこり羊が顔を出して首を傾げて。
「ヤギさん……ここから先は鉄火巻き……足を踏み入れてはなりません」
食べ物大切にする悪魔になってるよ。
「あー、これ見たんですね。ヤクゥザVSマッフィ。懐かしいですね。ヒロユキ・チバには良くしてもらいました」
……ん???
「や、ヤギのアニキ?なんばいっとるだよ?」
悪魔、それどこの言葉?
「昔食うに困ったときバイトで。えっと……ここです、ここ」
そう言うと羊は動画を調整して乱闘シーンで一時停止。
拡大するとドスを持ってレーザーに突撃している羊(ニンゲン体)が写っていた。
「アンタ、時々とんでもない仕事してるわね」
「ヤギのアニキ……」
ウチでは殺陣教室が開かれている。
「えっと、こう抜きながらここで切ってるんですよ」
羊、すげえ。




