悪魔がウチにおりまして・343
ウチには悪魔がいる。
甘いものが大好きな悪魔が。
「ニンゲン!なんで空から降ってくる雨は甘くないのですか?」
またトンチキ言ってるなー。
「だって雨でしょ?甘い訳ないじゃない」
「ニンゲン!飴は甘いです!」
……おう、コイツ日本に来てどれだけ経つのだ?
台所から箸を持ってくる。
「悪魔、コレは?」
「箸です」
「この上を渡ることはできますか?」
「……頑張れば?」
頑張らなくてよろしい。
「日本にはこのように同じ名前で違う物があります」
「わかりました」
素直に頷く悪魔。
「よろしい」
「なぜ雨は甘く」
「歯医者に連れてくわよ」
「キシャー」
威嚇するなら物分かりよくしなさい。
「ニンゲンは悪魔です。でも、あの歯医者はもーっと悪魔です」
半分間違い、半分正解。
なんならアンタも悪魔でしょ。
「昨日ちゃんと歯の検査してもらったんでしょ?なら良いじゃない」
悪魔の目からハイライトが消える。
「ニンゲン?世の中正しいことだけで回るなら裁判も戦争も起きないのですよ?もし生きる者すべてに感情が無く、理性のみで行動できるのなら警察はいらないのですよ?ニンゲンも感情に負けてしまうことはあるでしょう?コレをしたらダメだってわかっていてもしてしまうことがあるでしょう?別にボクだって歯を磨いたり、ちゃんと検査してもらうことが正しいこととわかってますよ?でもね、ニンゲン?世界というのは倫理で回っていないのですよ?わかってま……」
「徐々に近付いてこない」
過去1長い言葉を吐きながら歩いていくる悪魔にチョップを入れる。
目がガン極まりで近付いてくるのはかなり怖いものがありますよ?
「……はっ!?ボクは一体?」
意識飛ぶくらいってどういう状況よ。
「とりあえず、雨は甘くありません。飴はスーパーです。よろし?」
「あいまむ」
「どうしても甘いの欲しかったらうぱに臼を借りなさい」
自分で言っていて訳が分からない。
「うぱちゃーん!臼ー!」
悪魔は外に飛び出して行くのでした。
うぱ、臼どこに保管してんの?
「うぱ殿の臼、某の家に預けてます。なんか神器だったみたいで」
そんなものでコーヒー挽いてたの!?




