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悪魔がウチにおりまして・342

その時我々は思い出した。

世の中には強者がいることを。


ある昼下がり。

唐突に鳴る玄関のチャイム。

部屋の中に居たのは宝田メノウ、ミミ、ヤギ、兎田。

幸か不幸か、権之助とクモ、そしてうぱは遊びに行っていた。

この者たちは生半可な戦力で撃退することが敵わないのは周知の事実だ。

しかしそれもより強大な力の前では薄紙を破るが如し。

ここでの不幸はターゲットがその場に居たことだ。

そして更なる不幸は、その本人が扉に手をかけたことだった。

その強者は扉の前で息をひそめている。

圧倒的力を持つもの故の余裕が、開く扉と同時に顔を出すのだった。


「はいはーい、開けますよー」

悪魔はなったチャイムに反応してノブに手をかける。

その時私はそうめんを茹でていて手を離せなかった。

そのことが、あの悲劇に繋がるなんてその時は全く想像してなかった。

「な……、何しに来たのです!滅べ、滅ぶのです!」

いきなり上がる悪魔の叫びに羊も牛も片膝を立てて臨戦態勢になる。

しかし、動かない。

ギャグ漫画のように滝の汗を流す羊。

再びゴロリと横になる牛。

全く誰が来たのか見えない私。

「ここで……滅べー!」

悪魔の帯電する頭にチョップする手が見える。

「周りに迷惑でしょう?ダメですよ、ちゃんと定期検診に来なきゃ」

その間の抜けた声を聞き、安心した私はそうめんを噴き溢さずにすんだ。

「ごめんなさいね、お昼時に」

にゅっと顔を出したのは、歯医者だった。


「ボクも頂いちゃって申し訳ないね」

麺つゆに薬味を入れながら歯医者はにこやかにそうめんを掬う。

羊、背筋ピーン!牛、歯医者から薬味を受け取り、悪魔はさっきからキシャーと唸る。

「ニンゲン、こんなヤツにごちそうするんじゃないです、塩撒け、塩です」

ちゅるるっとそうめんをすすりながら悪態を吐く悪魔。

「で、なんで来たんです?」

この歯医者、実は悪魔として最高位のはずでしたが。

「そうそう、この子が歯の定期検診に来ないから」

「こんな諸悪にボクの口など晒せないのですー」

コイツが虫歯を治してもらったときから露骨に嫌がってたもんなぁ。

「そーゆーことなら食べたら持って行っていいですよー」

「ニンゲン!?」

「ありがと、ほらミミさーん、行くよー」


悪魔はそのまま引きずられていく。

「この家で一番怖いのってニンゲンさんですよねー」

牛は、つゆをすすっていた。

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