悪魔がウチにおりまして・341
ウチには悪魔がいる。
お腹を出して昼寝している悪魔が。
先ほど昼ご飯を食べたばかりだというのに即寝ている。
「悪魔ー、牛になるよー」
ご飯を食べてすぐに寝たら牛になる。
そんな迷信を信じているわけではないが、なぜか脈々と受け継がれている言葉なのだ。
「すでに牛ですが」
昼からビールを飲んでいた元祖牛からのクレームが入りました。
「アンタじゃなく、こっち」
寝ながらお腹をポリポリお腹を掻いているんですが。
「ミミさんが同族に?まさかー」
牛は信じていないように手をひらひらと振っている。
私も信じているわけじゃありません。
「ハムカツ!?」
悪魔がはっきりと聞こえる寝言を叫んで再び寝息を立てる。
「どんな夢見てるのよ」
「牛になる夢でも見てるんじゃないですかー?」
牛はによによしながらビールをあおる。
絶対、迷信って知ってたでしょ。
「まぁ、太るからって牛って表現してるだけだし」
「それも不名誉ですよねー。別にボクらそんな太ってないというのに」
牛は自分のお腹をむにむにしながら言っているのであまり説得力がない。
「ちくわ天……」
先ほどからあまりにもはっきり寝言を言う悪魔。
「さっきから揚げ物ばかりじゃない?」
「ボクとしては焼肉とか牛丼とか言われないだけマシですけど」
一応気にしてるんだ。
「ねぇ、トンカツ」
「種族は変えないでもらえます?」
やっぱり気にするんだ。
「で?なんです?」
「アタックってそんなに危ないの?」
羊は何にも教えてくれなかったから。
「……さぁ?いや、はぐらかしとかじゃなく」
私の殺気を感じたのか両手を上げる。
「そもそも、ウチらにアタックってそんなに来ないんで。だってこちらの方が力強いのは周知ですので」
つまり、本当に引き受けてくれていたんだ。
「ん、ありがと」
「ニンゲンさんもあまり気負わず。そもそもミミさんだけじゃなく他の子たちもいるので目立つんです。だから誰狙ってるのかはわからんのですよ」
「私かもってことでしょ」
牛は静かに頷く。
「ミジンコっ!」
空気を読まない寝言が響くのだった。
ウチには悪魔がいる。
「夢ですか?スキーに行く夢でしたよ」
なんであんな寝言出てたのよ。




