悪魔がウチにおりまして・337
ウチには悪魔がいる。
ハンモックに揺られている悪魔が。
「悪魔ー。仕事は良いのー?」
「労災でーす」
会話が成立しているようでしていないよね?
「昨日寝てただけじゃない」
「ニンゲンは甘いですねー。悪魔というものは夢の中でも戦争なのです」
全くわからないけどとりあえずサボりってことでいっか。
「しかし、そんなハンモックいつの間に買ったの?」
天井に張られたハンモック、そんなもの持ってなかったでしょうに。
「クモちゃんに作ってもらったですー」
さすがクモ。器用だよね。
「クモちゃんたち、ありがとうですー」
クモ……たち?
「そういえばクモっこって今どれくらい居るの?」
このクモ、子ども産むことができたはず。
「分体だって言ってますー」
「数が増えているのは一緒でしょ。で何匹?」
悪魔は指さし確認している。
「ひーふーたくさん。無理でーす」
もう少し頑張れよ。
「いやだって、本当にたくさんですよ?ニンゲン、数えます?」
「なんとなく嫌な予感するから止めとく」
ただでさえ大きな虫を、たくさん数えたくありません。
「ならたくさんですー。ボクも休みたいのですー」
本当に動く気無いなー、コヤツは。
「ミミ君!たかがアタックを受けた程度で情けない!」
ご都合よく畳から生えてくる羊。
「アンタ、仕事は?」
「いやぁ、戦闘機22号君は優秀で助かります」
……ザリガニ、こき使われてるなぁ。
「で?アタックって?」
「それはですね……」
羊が話しかけたところで悪魔が天井から吹き矢を放つ。
その折り紙で作った矢は羊の頭を直撃した。
「ヤギさん、ニンゲンには関係ないのですー。黙ってるですー」
あれ、珍しい。
この子がイラついてる?
「そうでした。ニンゲンさん、お忘れを」
はいそうですか、と引き下がるとお思いで?
「神ちゃーん、アタックってー?」
『ケンカ売られたってことー』
「ありがとー」
羊、いつの間にか押し入れの中に身体を半分突っ込んでいる。
「い、いつの間に妻との交信手段を……」
「アンタらが勝手にテレパシー送ってくるんでしょうが。で、悪魔大丈夫なの?荒事?」
私の心配をよそに悪魔は面倒くさそうに見下ろしている。
「ニンゲンには関係ないのですー。黙ってるですー」
「その物言い、我慢できるほど大人じゃないよ?」
羊がカタカタ震えている。知るか。




