悪魔がウチにおりまして・334
ウチには悪魔がいる。
外からの影響を受けやすい悪魔が。
皿洗いをしているときに悪魔が私の後ろで声を上げる。
「ニンゲン!ハンバーグを作りたいのです!」
「はいはい、今度作ってあげるから……ん?作りたい?」
「ですです。ボクが作りたいのです!」
水を止め、振り返ると目が燃えている。
手には、最近仕入れたマンガを持っていることを考えると、オチは読めた。
「ハンバーグ、描かれてましたか」
「ですです!今回は牛を仕留めて、玉ねぎとの激闘……感動です!」
悪魔が持っているマンガは『シェフが征く』
異世界に転生したシェフが自らの肉体を賭けて食材とバトルして、勝ち取った食材で料理するバトルマンガ。
食材が全員喋るし、勝ったら自分の身体の一部くれるので割と批判が集まるマンガである。
「悪魔、現実に戦える食材は無いわよ?」
念のため、悪魔に注意すると鼻で笑う。
「ニンゲン、マンガと現実の区別付かないのでぇすか?」
よろしい、角に鉄アレイをくくりつけましょう。
「すみません、ボクは美味しいハンバーグを作って食べたいのです。重いです。ごめんなさい」
首がアレな感じになっている悪魔から鉄アレイを外してあげる。
「久しぶりに一緒にスーパー行くか、ほら変身して」
「あいあいー」
なんでちょっと面倒臭そうなのよ。
悪魔とスーパーに来るのはなんか久しぶり。
最近は時間が合わず、別々に行くことばかりだった。
「ニンゲン!牛肉安いです!98円です!何トン買いましょう!?」
「せめてキロにしなさい」
えっと私、悪魔、クモ、狐。で、うぱはいらなくて牛の分もあとモグラ……。ひとり200グラムだから……。
『私の分もお忘れなく!』『私も行くからー』
なんか脳内に直接語り掛けられることに違和感を覚えなくなってきた。
「聞かなかったことにしていい?」
「ヤギさんはともかく、神ちゃん敵に回すと執念深いです」
私はひき肉パックをふたつ追加するのだった。
モリモリの肉の会計を済ませ帰り道。
「考えたらにぎやかになったわね」
「ですねぇ。でもニンゲン、ひとつ多くないです?」
「それはね……」
ウチにはみんなが揃っていた。
「なんか美味しいものが食べられる気がしたのよねぇ」
やっぱり、お姉もちゃっかりいるんだよなぁ。




