悪魔がウチにおりまして・323
悪魔が台所に立っている。
怪しい。
それこそ居候を始めた時には自分の口に合うものを食べたかったせいだろう、そこそこ自分でご飯を作っていた。
どぅわぐわぁ!最近は!全く!立ったことがない!
そんな悪魔が積極的に台所に立つだと?
雪が降ってもおかしくない!
「ニンゲンさん、失礼なこと考えてるオーラが出てますよー?」
黙りなさい、カルビ。
「部位で言わないでください」
牛のクレームは無視しつつ、望遠鏡を使って悪魔が何をしているのか観察です。
「おまわりさーん、変なヒトがいまーす」
……一間で望遠鏡使ってた私が悪いか。
「さっきから騒がしいのですよー?」
悪魔が振り向くことなく文句を飛ばしてくる。
生意気になった……違う、生意気は昔からだ。
「悪魔ー、何作ってるのー?」
そもそも聞けばよかったじゃないか。
「タケノコの天ぷらですー」
そっかそっか、タケノコの……ん?
今の季節……というかこの暑さでタケノコ?
「牛。タケノコっていつ採れる?」
「春ですよね」
「悪魔が今料理してるのは?」
「タケノコって言ってますね」
……美味しいの、今のタケノコ。
「コレ、ぽんちゃんからもらったのですー」
『ボクが育てました……ました……た……』
モグラ!脳内に直接語り掛けて!?
『タヌキです……です……』
お静かに!ボケに対してツッコミが少ないんだから!
「この季節にタケノコってどうなの?」
「ぽんちゃんが持ってきたものですからー」
モグラに対しての信頼強すぎるでしょ。
「そろそろ食べられますかねー」
悪魔は浮かんできたタケノコを菜箸でダイレクトしてる。
火傷してしまえ。
「はふっ、ほふっ……んん!」
口の中の皮べろんした?
「美味しい!?」
なんで驚いてんの、アンタ。
「美味しんです、ニンゲン食べてみるですー!」
ホントにぃ?
疑いつつ食べる。確かに美味しいが、何か味が違う……。
「……コレ、冬瓜じゃないです?」
牛がつまみ食いしながらぽつりとつぶやく。
『ボクはちゃんと言いました……ました……』
悪魔、前もモグラの話聞かなくて大変な目にあってなかった!?
ウチには悪魔がいる。
食べ物の前に話を聞かなくなる悪魔が。




