悪魔がウチにおりまして・31
ウチにはクモと狐がいる。
そう、2匹はお留守番です。
保険問題はあっさり解決した。
ひょっこり顔を出した羊に相談したところ15秒で保険証を用意してきた。
「ニンゲンとは厄介ですね、このような紙が無いと治療できないとは」
うん、今回治療するの悪魔だからね。
保険証には「和久間 ミミ」とかかれ芸の細かさに感心してしまう。
「に、ニンゲン。ここ、危なくないですか…」
地雷子ちゃんと昨日調べた歯医者に向かうと中から消毒液の香りが鼻を衝く。
先に一組の親子が居て、子どもが真っ青な顔をしている。
「金子さーん、金子翔太さーん」
看護師さんが名前を呼ぶと子どもがびくっとして母親と扉の奥に消えていく。
しばらくするとあのトラウマ音がした後に子どもの叫び声が響き渡る。
ちらりと悪魔を見ると真っ青な顔で変身が解けている。
他に人が居なくてよかった。
「悪魔、変化解けてる」
「帰りましょう」
帰れるわけないでしょうに。
「和久間さーん、和久間ミミさーん」
しばらく待っていると悪魔が呼ばれる。
私の服の裾をきゅっと掴んで一緒に来てくれアピール。
仕方ないので付いていくと、中には気の良さそうなお兄さんが一人でいた。
「はい、どうしました?」
「なんでもないのです。ニンゲンが間違えて連れて来たのです」
「血迷ってますが、虫歯です。左奥、かな?」
なんで私が説明しないといけないのじゃ。
「はい、口開けてー。あー、確かに。意外と軽いので今日で終わらせちゃいましょう」
言うが早い、お兄さんはあの子どもであれば逃げ出す音を鳴らすドリルを構えて悪魔の口を器具で固定する。
「------!!!!!」
この後の出来事は、とても描写できません…。
まぁ、歯を削っただけですし。
「生きてるー?」
待合室で支払い待ちをしている隣で目の焦点の合わない悪魔が半分口を開けて座っている。
「堕落など要りません…全戦力を以ってニンゲンを滅ぼしましょう、それが世界の平穏のためです…そうです、諸悪の根源は…」
アンタが歯を磨かなかったことでしょう。
恐ろしいことをうわ言のようにぶつぶつ言っているのを放置。
会計を済ませてさっさと帰りましょう。
「はい、今回だけで大丈夫です。ヤギさんによろしく」
…はい?何言いやがりました?この歯医者。




