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悪魔がウチにおりまして・308

ウチには悪魔がいる。

ソーセージとビアが好きな悪魔が。


「悪魔、今日もサボりかい?」

ベッドにごろりと横になりながらソーセージを食べている悪魔に軽口を叩く。

「うるさいですー。食べられるときに食べておかないとー」

最近、悪魔は言い訳をしながら食いだめをしている。

こんな状況だというなら仕方ない。

「だからと言って私の分まで食べるのはよしてくれ。働いているときに腹が減って仕方ない」

「ニンゲン、足らないですか?ボクの分も食べるですか?」

悪魔は食いかけのソーセージを突き出してくる。

「そんなヨダレまみれのものを誰が食べるって言うんだ」

冗談で返したが、本当はヨダレどころか砂にまみれていたとしても食べただろう。

それくらい今の食糧事情は厳しいものになっている。

悪魔がいてくれるから検閲をパスできている部分があるが、それでもいつまでもつことか。

ドアのノブに手をかけたところで轟音が鳴る。

「ニンゲン!」

「あー……今日の仕事は無しかなぁ」

こんな早朝に襲撃があるのは珍しい。

それだけ末期であることの証明なのだろう。

「ニンゲン、無理に働く必要ないんじゃないですか?お金ならボクが出しますし」

悪魔は足元に駆け寄ってくる。

「そうは言ってられない。他のみんなが頑張っているんだ。私ばかり怠けていられないよ」

悪魔のおかげで楽をできている部分が間違いなくある。

「ニンゲン……」

「まぁ、被害状況見てくるよ。早めに戻るからさ」

「待つです、ニンゲン。行っちゃダメです……」


「ニンゲン!!」

悪魔はタオルケットから飛び起きた。

その声の大きさに狐がおはぎを落としてしまった。

「……悪魔?」

普段なら叱りつけるところだが、肩で息をしているのを見るとそれも憚られる。

「……ニンゲン、今日のご飯はソーセージがいいです」

「い、いいけど」

「ちょっと出かけてきます」

悪魔はそのまま外に出ていってしまった。

「狐ちゃん、アレ、何だと思う?」

宿主やどぬち殿、そっとちておいてあげてください。ミミ殿が己から話すまでは」

なにか知ってるな。

でも、触れちゃいけないんだろうね。


夕飯時、悪魔はいつも通りだった。

珍しく黒ビールを飲んでいたこと以外は。

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