悪魔がウチにおりまして・306
私らは遭難してる。
「ニンゲンー、ホタルがー」
まずコイツ黙らせるところからかな?
ホタルが見えるということは既にとっぷりと夜。
つまり動くと危険です。
一応火を焚いて、動物が寄って来ないようにしてるけどコレがどこまで効果があるかどうか。
「ニンゲンー、夏でよかったですー」
まぁ、寒くないからね。
ちなみにこの火は悪魔の雷を乾いた木にぶつけて起こしたものです。
「悪魔の雷で充電できたらよかったのにね」
「ですねぇ、たぶんちゅどんしまうから」
そのちゅどんってデータどころか本体が黒焦げになりそうです。
「でも、こういうキャンプ楽しいですねぇ」
「遭難だよ?」
さすがに心の中でのツッコミで抑えることはできなかった。
「ほら、星がキレイ」
「現実逃避!?」
暗いせいで悪魔の表情が見えないから冗談で言ってるのかも把握できない。
「ニンゲンー、お腹空きましたー」
「自由か」
お腹空いてるのは私も一緒だよ。
「ニンゲンも食べ物持ってないですよね?」
「残念ながらね」
アメくらいあるかなって思ったけど、ひとかけらの食べ物も無かった。
「……ボク、食べ物探してきます!」
「ちょ、悪魔!」
悪魔は止める前に暗闇に走って行ってしまう。
自然の夜はこんなにも暗いのかと、改めて思ってしまう。
「今じゃないよ、悪魔ぁ」
もっと早い時間にさ、探しに行くとかできたじゃない。
こんな状況でひとりに……。
「ニンゲンー!おっきな食材ですー!」
人が干渉に浸っているときにぶち壊すなよ。
暗闇から声が聞こえる。
なにか引きずるような音も聞こえる。
「帰ってくるの早かったわね」
「ですですー。こんな大きい獲物が……」
悪魔が引きずってきたのは、青いザリガニ。
ザリガニ!?
「あの、助けに来なくてよかったっすか?」
「……タンク3号!?それならそうと言ってくれれば!」
悪魔ー、ザリガニキレてるよー。
「言いましたけどね?何度も。ミミさんが『獲物ー!』って叫んで聞いてくれなかったっすけどね?」
「ほら、悪魔、謝って」
「……ごめんです」
明くる日、2匹と山を下る。
ザリガニ、強くなったねぇ……。




