悪魔がウチにおりまして・299
ボクは滝に打たれています。
夏っぽいことがしたいのです。
ごんちゃんの家の近くにある滝。
ここで朝からざばざば打たれています。
コレが夏っぽいことなのかはわかりません。
「ミミ殿ー。ご飯ができまちたぞー」
「わかりましたー」
こっちの世界のご飯は味が薄めなので夏っぽいのです。
なにが夏っぽいのかよくわかってません。
「今日は梅と鮭のおにぎりです」
ごんちゃんが持ってきてくれておにぎりをぱくり。
こ、この味は!
「このおにぎり……お米はぽんちゃん印ですね!」
「……さすがミミ殿」
ごんちゃんがニヤリと笑いました。
「やっぱりー。ぽんちゃんのところのお米は冷えても美味しいですー」
「まさに。ぽんちゃんのお米はかか様も大好きなのですよー」
ごんちゃんのお弁当はいなり寿司。
おにぎりはボクのために握ってくれたようです。
「ちかし驚きました。ヤギ殿と神殿がご結婚なさるとは」
「ですね、爆発すればいいです」
ごんちゃんは引きつっています。
「ほ、ほら。某の祈祷がちゃんと効いたということですので」
そんなこともありましたねー。
燃えればいいのです。
「式は挙げるのでしょうか?」
「なんかヤギさんはやりたくないみたいですけど、相手が神ちゃんですからねー」
というか、よく悪魔族との結婚の許しが出たものです。
「ですねー。おふたりだけで決まることではないのでしょう」
ごんちゃん、腕を組んでうんうんと頷いています。
「滝に打たれるのって朝しかやっちゃダメなんでしたっけ?」
「ですです。あまり“気”を受けすぎてちまうと返ちが起きるので」
……その“気”ってボク受けて平気なのか、心配になってきました。
「それなら今日はもう帰るのですー。明日も来て平気です?」
「んー。ミミ殿の言う『夏っぽい』になるなら来てもらって良いのですが」
確かに、滝は気持ちいいですが動けないのが退屈なのです。
「それなら明日はちゃんと仕事するですー」
「……サボりでちたか」
絶対呆れてます。気にしません。
「今日はありがとうございました。また来るですー」
ごんちゃんに手を振って家に帰るのです。
なんだか邪心が抜けた気がしますー。
「ただいまですー」
「悪魔、専務さんから始末書書けって来てるよ」
……厳しすぎるのです。




