悪魔がウチにおりまして・30
ウチには悪魔がいる。
甘いものも大好きな悪魔が。
「ニンゲンー、ほっぺが痛いのですー」
風呂から上がると悪魔が頬を押さえて泣きそうな顔をしている。
「宿主殿!ミミ殿が!ミミ殿が!」
狐が足元に縋りついて、クモも頭の上で慌てている。
ええい、うっとうしい。
「ほっぺ?少し見せなさい」
クモと狐を振りほどき、悪魔の頬を軽く触る。
「みぎゃーーーーー!!!???」
コイツの声が他の人に聞こえないことが幸いした。
アパート中に謝りに行くはめになるところでした。
「に、ニンゲン!?戦争ですか!?戦争なのですか!?」
「宿主殿!事と次第では破門ですぞ!」
狐の門下に入った覚えはございません。
クモは2匹をなだめるように間に入る。
この子は最後まで面倒見てあげましょう。
「ちょっと触っただけでしょ。ほら、口開けて」
いきり立っていたが素直に口を開ける悪魔。
なぜか一緒に開ける狐。
やっぱり皆世話してあげますか。
口の中を覗くと歯茎が赤く腫れている。
「虫歯だね、こりゃ」
「「虫歯?」」
「そ。アンタお菓子食べた後に歯磨いた?」
「はをみがく?」
そういえばコイツだけでなく、狐も歯を磨いているところを見たことがない。
クモは別。歯があるか知らん。
そういえば、この前与えたお菓子は既にない。
値下がりしてたからとカゴ一杯に買ったお菓子が、全滅…だと?
「そんな量食べて歯も磨かなければ虫歯にもなるか。狐ちゃん、アンタは平気?」
「某は修行中の身。宿主殿から頂いてはならぬと心得ております」
てことは悪魔が1人で食べたんかい。
ちらりとクモを見る。目が合うと頭を下げた。
この子には分けたか、ならばよし。
「ニンゲンー。歯を磨いたら痛いのは無くなるのですか?」
「痛くなっちゃったら磨いてもダメ。歯医者だね」
スマホで近所の歯医者を検索かけると、明日診察してくれそうだ。
「もう夜だから、明日お医者さん行きましょ。今夜はガマン」
「みー」
みーじゃない。自業自得でしょ。
ウチには悪魔がいる。
…この子保険効くの?




