悪魔がウチにおりまして・297
ウチには悪魔がいる。
さっきから小麦粉を練っている悪魔が。
「悪魔、なにしてるの?」
「うどんを作っているのですー」
うん、そこを聞いてないんだな。
さっきから作られる量のことを聞いてるんだよ。
その量、すでにクモの家……普段ロフトと言っている場所にまで届きそうなんだよ。
悪魔が小麦粉を練り、平たくして放り投げる。
自分の家に向かって飛んでくるもんだから、クモは必死にはたき落としていたらいつの間にか高く積みあがっていたってわけ。
「この量の小麦、どこから仕入れてきたの?」
「ヤギさんから買ったですー」
練る手を止めずに悪魔は更に小麦の袋を開ける。
「……この量は何?」
「ごんちゃんに頼まれたんですよねー」
原因は狐かい。
「ミミ殿、お疲れ様です。うわぁ、たくさんできまちたねぇ」
積み上ったうどんタネを見て、満足そうに頷く。
「狐ちゃん、なんでこんなにうどん?」
「実はですね、兎田殿のお店でうどんを出すことにちまして」
バーよね?
「なるほどですー。確かにあのお店でうどん出すのはぴったりですねー」
悪魔、バーだよ?
「そうでしょう?絶対に需要があると思うのです」
狐、バーで、うどんですか?
「こんにちはー、うどん取りに来ましたー」
店長・牛さんいらっしゃい。
ねぇ、バーでうどん出すことにどう思ってるのか聞きたいんですが。
「これで足りますかねぇ」
ええい、ここにはバカしかおらんのか!
「みんな、バーで、うどんは、流行らないわよ?」
空気が凍った。
『え?』
え?じゃないんだよ。
「お酒飲みに来るところで、あまりご飯食べないでしょ?うどんなんて尚のこと……」
「そう思うじゃない?あそこ、売れるのよ」
お姉がうどんタネを車に積み込みだした。
「なんで?」
「知らないわよー。でもここ1か月の売り上げ35%が食べ物、おつまみよりご飯が売れてるの」
バーよね?
「……たんく3号殿が調理担当なのですが」
「あのザリガニね」
「どうやら文字の修行を積んだみたいでちて」
あの板前ネズミ直伝かぁ。
ウチらはバーに居る。
試作品を食べながら思った。
「ここレストランでよくない?」
「恐縮っす」




